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ホテルのバーベキューか。それも良いかも♪
「じゃあ、待ってますね!」
「ああ、楽しみにしてろよ」
その時、ニヤッと笑った彼の笑顔の意味を、この時のわたしは気付いていなかった。
けれど翌日はすぐに訪れる。
初夏らしく夏の白いワンピースと麦わら帽子をかぶった。
そして日焼け止めを肌に塗る。
今日は快晴。海が近いとなると、紫外線はキツイだろう。
…思えば前まではこんなふうに、おシャレをすることなんてなかった。
海に遊びに行くのも、学生の時以来だ。
でも社長に連れ回されるようになって、さすがに外見に気をくばるようになった。
社長はプライベートで、いろいろな所に連れて行ってくれた。
わたしの知らない世界を、教えてくれた。いろいろと勉強になった。
多分今のわたしなら、普通の25歳の女性として振る舞えるだろう。
…中身はともかく、外見だけならば大人になった。
それもこれも、社長のおかげだ。
ととっ、ケータイが鳴った。
「着いたぞ」
「今行きます」
さて、今日も楽しもう♪
インドアだったわたしが、すっかりアウトドアになってしまった。
社長はぶちぶち言うけれど、わたしとしてはかなりの進歩だ。
これも社長のおかげだ。精一杯仕事をして、恩返しをしていきたいな。
「お待たせしました。今日は遠い所ですか?」
「いや、近くの海にした。穴場があるんだ」
「それは楽しみです」
助手席に乗り込むのも、今はもう抵抗が無い。
「他の秘書課の方達は後から来るんですか?」
「何でだ? 来るわけないだろう? 誘ってもいないのに」
「そうなんですか? 昨日の話の流れだと、そうだと思ったんですけど」
「アイツらだってヒマじゃないだろう」
…まっ、それは言えるな。
いきなり誘って受けられるのなんて、わたしぐらいなものだろう。
「あっ、この間お借りした本、おもしろかったです。外国の本なんてあんまり読まないので、新鮮でした」
「それは良かった。まさか6ヶ国語もイケるとは思わなかった」
「学ぶのは好きです。経験値を積むことならば、もっと好きです。だから事務作業がとても好きなんです」
「欲の無いヤツだ。事業を立ち上げたら、成功するだろうに」
「そういうのは社長みたいに社交的で自信家の人じゃなきゃ、できないことですよ。わたしはそういう人の下にいたほうが気が楽で良いです」
「言ってくれるな?」
「でも本当のことでしょう?」
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