禁を破りて時を見る
クロウは失神した蛇2匹を持って、町のなかを歩いて行った。町の中にもスライムがたくさんいる。
彼は少し考えてみた後、蛇2匹は薬草屋へ持っていくことにした。
クロウが薬草屋のドアを開けると、彼と同じくらいの年頃の娘がいた。娘の名はノヴァという。
<ジュノー王叙事詩〔アウネ写本〕>に出てくるノヴァとは、彼女のことである。
「クロウ、何しに来た?」
「蛇が失神している」
彼はそう言って、掴んでいる2匹の白い蛇を見せた。
「そのようだな......だが、うちは蛇用の薬は扱ってないのだが?」
「なんとかならんものか」
クロウとノヴァがそんなやり取りをしていると、兄弟は失神から回復して叫んだ。
「く、苦しい~~~。離して、離して!」
「むむ、蛇がしゃべった!」
クロウが強く掴み過ぎているから苦しがっている。慌てて手を離すと、2匹はノヴァの店の中へ入っていった。
ノヴァは仕方ないなという顔をした。クロウも入ろうとするとノヴァは彼に質問した。
「ところでお前、風呂はいつ入った?」
「ううむ、三日前くらいかな」
「いいか、クロウ! 風呂は毎日入るのだ! うちにくるときは風呂に入ってからくるのだ! わかったか?」
というのも、この犬顔の青年は子供の頃から風呂嫌いなのである。幼馴染みのノヴァの店にはよく来るが、その度に風呂に入れと言われている。
クロウは、しぶしぶわかったと言い風呂屋へ向かった。
お水、お水をいただけませんか? と蛇に言われ、ノヴァは深めの皿に水を入れ蛇に与えた。
兄弟は慌てて水を飲んだため、兄・タカキはしゃっくりをした。その瞬間、しゃっくりとともにお腹の中の〔タイムマシーン〕が口から飛び出したのである。
〔タイムマシーン〕はカチッ・カチッ・カチッと時計の秒針が進むような音を立てている。
ノヴァはそれに触ろうとした。
あ、触っちゃ駄目! とタカキは言ったが遅かった。ノヴァが〔タイムマシーン〕に触れると、彼女は時間跳躍した。
気づくと彼女は、一面の麦畑の中にいた。カチッ・カチッ・カチッという音は聞こえ続けている。
麦畑の中に少女と子猫がいた。少女は薬草屋の娘ノヴァにそっくりであった。その少女が話しかけてくる。
「こんにちは!」
「こ、こんにちは。ねこちゃん、可愛いですね......」
「うん。この子はニコルっていうの」
すると、子猫がしゃべった。
「はじめまして。こんにちは。ぼくはニコル・クーン・ジュノーといいます。」
「ニコル・クーン・ジュノー......?」
秒針が進むような音が止まった。そしてピピー、ピピー、ピピーという機械音が響くと、彼女は自分の店に戻っていた。
〔タイムマシーン〕からその機械音が響いていた。
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