〔スライム界への侵攻について〕

ユウシャとヨゲンシャ

 後にスライム達はこの空間軸をスライム界と呼ぶようになる。本来この空間軸には名前はなかった。それは名前をつける者がいなかったからであろう。


 この空間軸の住人は、ほとんどがスライムである。そして、ここには『王』や『神』に相当するような存在はない。すべてのスライムは基本的に平等であったが、' 上級スライム ' と認識されるスライムはいた。


 〈ユウシャ〉と呼ばれるスライムと、〈ヨゲンシャ〉と呼ばれるスライムがいるのである。〈ユウシャ〉の名前は、ガイラス・スラ・ゴドリノ。〈ヨゲンシャ〉の名前は、ルキウス・イムノ・コッタと言った。


 〈ユウシャ〉ガイラス・スラ・ゴドリノと、〈ヨゲンシャ〉ルキウス・イムノ・コッタの娘、アウレリア・イムノ・コッタの間に生まれたのがユリウス・スラ・ゴドリノである。すなわち、朝顔がサツマイモと呼んでいる彼のことだ。


 ちなみに、ガイラスは青スライムで、アウレリアは紅スライムである。


 サツマイモことユリウス・スラ・ゴドリノがまだ幼少の頃、スライム界は ' 悪しき者 ' の侵攻を受けた。


 まず最初に、〈ヨゲンシャ〉ルキウス・イムノ・コッタが、' 訪問者 ' が来たることを予言した。前述の通りこの世界に『神』はいないため、予言といっても『神託』のようなものではない。


 それはスライム達の祭りの日であった。祭りの日には、彼らは ' 親睦の火 ' という大きな焚き火を囲み、皆で手をつなぎ夜明かし踊りをおどるのである。


 スライム達は ' 親睦の火 ' を囲み皆で踊るこの日を本当に楽しみにしているのである。というのも、皆で踊ることにより彼らは心から打ち解け合い、中には結ばれる男女オスとメスもいるからなのだ。


 そんな楽しい祭りの最中、〈ヨゲンシャ〉ルキウスはこの世界に原因不明の奇病が発生だろうと予言した。その奇病に罹患するとスライムはカボチャになってしまうと言う。しかし、ルキウスはその奇病は決して悪しきことではないと言った。


 そして、その奇病が蔓延しきる前に、' 訪問者 ' がこの世界を破滅させるだろうと予言したのだ。

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