騎士団の団長

 〈幼女〉朝顔とカモノハシが ' 金色の蛹 ' をみていると、"にゃお~ん、にゃお~ん、にゃお~ん。キキーーっっっ"と何かがやって来て、急停止する音が聞こえた。ネコトラである。


 ちなみに一応説明しておくと、ネコトラとはネコであり、かつトラックである。


 ネコトラは ' 金色の蛹 ' を見ると「にゃお?」と不思議そうな顔をしたが、すぐに興味を失ったようで、サツマイモを見て「にゃあ!」と言った。


「おのれ、ネコトラ! また、あたい達を轢きにきたのか?」


 朝顔は怒ったが、ネコトラは馬鹿にしたように、ゆっくりと首を横に振った。

 ネコトラも神である ' ネコ ' の眷属であるため、朝顔やカモノハシ、スライムのことは基本的には下級なものと思っているのかもしれない。


 朝顔は馬鹿にされて、さらに怒りだそうとしたところ、ネコトラの運転席から壮年の男が降りてきた。

 それはドゴリコ王国騎士団の団長であった。あの時、サツマイモを見ていた人物である。団長は、サツマイモを見るやいなや言った。


「おお! 勇敢な少年よ! ぜひ、うちの騎士団に入って欲しい」

「騎士団ていきなり唐突だし! それに俺、人間の姿してるけどスライムだよ」

「スライムでも構わん!!」


 ネコトラが後ろ足で自分の荷台を指さし「にゃお~ん」と言った。荷台に乗れと言っているのだろう。

 ネコトラはネコであるため荷台も毛で覆われていてモフモフである。その荷台に乗るのも気持ち良いかもしれないが......


「これこれ、ネコトラよ、この少年を荷台に乗せるわけにはいかんぞ」


 団長はそう言いながら、しかし強引にサツマイモをネコトラの助手席に座らせて連れて行ってしまった......


「さ、サツマイモが連れていかれてしまった!」


 〈幼女〉朝顔は少しさびしい気持ちになった。

 知り合って1日しかたっていないが、かなり濃い1日であったし、なによりサツマイモに命を救われたのである。

 朝顔なりにサツマイモに対して親愛な気持ちを持っていたのだ。



***



 そうこうしているうちに、' 金色の蛹 ' は羽化して金色の蝶になった。蝶はしばらくじっとしていたが、そのうちにひらひらと空を飛んだ。


 ひらひら、ひらひら......


 カモノハシは「金ピカ! 金ピカの蝶!」と言って興奮している。


 ひらひら、ひらひら......


 ' 金色の蝶 ' はひらひらと空を飛び、ドメスティック・フラワーズの一輪にとまった。

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