幼女型因子
朝顔が水を汲み上げている最中、その河原にはもう一匹奇妙な生き物がいた。' カモノハシ ' である。
そのカモノハシは男の子であったが、宝石が大好きであった。というより、彼は光るものなら何でも好きであった。
朝の散歩がてら河原を歩いていたところ、川底に光るものが見えたので、カモノハシはひとしきり川底をさらってみることにして川に入った。
そして、オレンジ色に光る石を見つけたので彼は大喜びして川から上がった。
それで上機嫌で河原を歩いていたのだが、ところがズコっと穴に落ちてしまったのである。
カモノハシはある意味最強の生命型兵器なので、穴に落ちることくらい予測できそうなものなのであるが......。綺麗な石を見つけて、少々浮かれていたのかもしれない。
「だ、誰だこんなところに落とし穴を掘ったのは!」
カモノハシは憤慨していたのだが、そこへツルツル、ツルツル、という奇怪な音が聞こえてきた。
「なんだ?......こっ、これは ' 地を這う者 ' が地を這っている音か......?」
地を這う者とはこのあたりによく出没する ' 妖魔 ' の一種である。
こんなときに ' 妖魔 ' が来るとは俺もついてねぇなとカモノハシは思ったのだが、穴の上から覗き込んだのは朝顔だった。
***
「カモノハシさんごめんなさい。」朝顔は穴の底に落ちたカモノハシに向かって言った。
その穴はだいぶ深いものであった。
「お前か!落とし穴を掘ったのは!」やって来たのが ' 妖魔 ' でないと分かり、安心したせいか彼は余計に憤慨していた。
「はい。しかし、わざとではないのです。水を汲み上げておこうと思ったら汲み上げすぎてしまったのです。それで地下に空洞ができてしまったようで......。」
「は?地下に空洞ができた?」
「はい。水を汲み上げすぎたのです。カモノハシさんはその空洞の上あたりを歩きました......。」
「あのな!空洞ができる程、水を汲み上げるな!............まあ、それより、ここから助けてくれ。足が滑って穴を登ることができない。」
朝顔はツルを伸ばしてカモノハシを引っ張り上げた。しかし、カモノハシは重かったため救出にはだいぶ時間がかかった。
太陽がだいぶ登ってきている。
ああ大変、もう朝が終わってしまうわ。彼女がそう思ったときには、花はもうしぼみ始めていた。
「王様にサツマイモを届けなくちゃならなかったのに、王様は明日の朝まで待ってくれるかしら?」
朝顔は途方にくれた。
「ていうかお前、朝顔なら ' ヒューマノイドタイプ ' に変形できるだろう?」
「ああ、そうでした。」と言って彼女は体をくねらすと人間の幼女の姿になった。
' ヒューマノイドタイプ ' に変形できるのは、' AP因子 ' を持つ生命型兵器のみである。
彼女が持っているAP因子は ' 幼女型AP因子 ' と呼ばれるものであった。
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