…初め



満面の笑顔が近付いてくる……有陽ゆうひちゃんだ。


「この間はおつかれ~」

「あの後、すぐ帰ったの?」


「ううん、ちょっと寄り道したぁ」


食堂の入り口で軽く会話を交わし、もう少し話していたかったけれど、お互い友達と一緒だったこともあって、すれ違う程度に別れた。





週末は学園祭だった。


何だかあっという間に終わった “行事” 。慌ただしかったな……と一瞬思い出したりしたけれど、すぐさまメニューに目を向ける。



  ここ最近ダイエットしてたからな……



「どうしよっか……」と言っていた友人達はもう注文をし終え、美樹みつきにいたっては、トレー片手に手を大きく振りながら、 “席、ここ取りましたアピール” をしている。


迷った挙げ句、普段あまり注文することの無いエビフライとクリームコロッケの定食を受け取り、席へ向かう。


「ごめん、遅くなって」


「じゃあ食べよう。いただきまーす」


美樹みつきの一声と共にわたしと聡子そうこもいただきますを言い、食べ始める。


「加世子がフライ系頼むのって珍しいよね?」


すかさず聡子そうこが突っ込みを入れてきた。


彼女はよく見ている、他人の事をよく観察しているというか、そこに嫌みな感じは無いのだけれど、時々 おおっ って思う。

美樹みつきは、意外に……というか、こういう時にはきっと気付いてはいるのだろうけれど特段何も言ってはこない。今回においても、チラッと私のトレーの方を横目で見なおし、「そういえばそうだね」と軽く流している。


そういう所がいいと思うし、このメンバーのバランスというのだろうか……とても居心地が良くて好き。

わたし自身の役割はどんななのか自分ではよくわからないのだけれど。





     

 

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