第4話*仕事しちゃったよ
「魔王様、少しは大人しくなさってください」
「せっかく異世界に来たのに大人しくだと!?お前は何を言っているんだ!」
「では本題に入りますね」
俺の訴えを無視して話し始めるソノ。
こいつ、本当に俺のこと主人だと思ってるのか?
「まず、予め募集していた魔王軍幹部候補者のリストがあります。といってもまだ絞っていないので当初のままですが」
机の上に山のように積まれた書類を指さし微笑む。
いや、悪魔の笑みにしか見えねえから。
やっといてくださいね、みたいな顔で見られてもね!?
無理だよ、そんな量。
いや無理ではないが、やりたくないよ。
「全てに目を通して頂き、厳選しましょう。数人に絞った後面接を行うのでその際も…」
「す、全てに目を通し面接だと…!?」
そんなのそっちでやってくれよ!
俺だったら面接とかクッッッソ嫌だかんな!
見る側にだってなりたくねえよ。
それが一から全部とかめんどくさいことしないといけない訳?
「ではお願いしますね」
「嫌だ」
「……はい?」
以前の、元の世界での俺なら文句一つ言わずにやっていた。
褒められるレベル、それ以上をこなしていた。
それもかなりしんどかったが。
でも今は違う。
俺はペコペコして仕事をする必要はないし、今やトップだ。
「ソノやっとけよ」
「貴方様の仕事ですよ。部下の仕事を代行するまではなくても、まさかご自身の仕事すらこなせないとは」
「俺はずっとそっち側だったんだよ!たまには楽させろよ」
それが失言だったのだろうか。
ソノは顔を歪め、書類の山を俺の目の前に置いた。
というより、叩き付けたに近いが。
「…どうした」
「魔王様は、元の世界で苦労されてきたのですね」
穏やかな口調で話し始めるが、顔はこれっぽっちも笑っていない。
俺はあの顔を、見たことがある。
…なんだったか、思い出せないが。
「苦労した……が、それが当たり前だった。皆そうだったからな」
「それと同じことを、ご自身が部下にされるのですか?ご自身が嫌だったことを…」
そこまできいて、俺はソノに笑いかけた。
わかったよ、やらなきゃいいんだろ?
てかこのままだと殺されそうだしな。
「どうしたんですか突然。気持ちわる…ゲフンゲフン」
「おっと聞き逃さなかったぞおい…まあ俺は俺の書類ちゃんとやるよ」
そう言うとソノはパアッと顔を明るくし、笑顔で何かを机に置いた。
それを恐る恐る見ると、思わず目を瞑りたくなるものがそこにあった。
「…ソノ、これは?」
「勿論追加の書類ですっ」
「そんな爽やかな笑顔で渡されたくなかったよ…っ」
とりあえず言われた通りに書類に目を通す。
様々な種族の魔物の情報がズラリと並んでいる。
…これ、鑑定スキルでなんとかならねえかな。
《鑑定》
種族――ゴブリンキング…―ヴァンパイア…―ドラゴン…―サキュバス…―ハーピー…etc
スキル――統率…―威圧…―魅了…―etc
頭の中に大量の情報が流れてくる。
種族、スキル、能力値……頭がパンクするかと思ったが、なんとか耐えられるらしい。
容量増やしたほうがいいなこれは。
「とりあえずソノより能力値高い奴とスキルが使えそうなやつに絞った」
そう言うとソノは目を丸くし、呆然とする。
2つの塊に分けられた書類を見比べ、「確かに…」と呟いている。
俺の仕事ぶりに感心したか。わかるぞ。
もっと敬ってもいいんだぞ!
一通り書類を見終わったソノが、予定リストを出す。
そこは面接の日程でズラリと埋まっていた。
「おいおい、こんなに面接いらねえだろ」
「こんなに少数に絞られると思ってなかったんですよ!…何日か削りましょう」
予定はソノに任せ、俺は再び書類に手を伸ばす。
魔王軍幹部って、そんなに憧れるもんなのか?
俺だったら絶対なりたくねえな。家でのんびり贅沢して楽しながら暮らしてえな。
仕事なんて行かなきゃいいのによ。
「…では面接は来週行います。
ソノがそう言うと窓から烏が入ってきた。
烏にしてはかなりデカいし足が3本ある。
「八咫烏って神話に出てくるやつじゃなかったか?」
「そちらの世界ではそうみたいですね。……面接の日程をこの魔物たちに伝えておいて」
「おーけー仕った」
喋んのかよ!?
てか「おーけー仕った」って…。
「書類見てて思ったんだが、やっぱお前優秀なんだな」
「はいっ!?」
「お前よりステータス高い魔物なんてあんまいなかったし、スキルも多くて3つくらいだったしな」
書類を整え、窓を開ける。
先程とまっていた八咫烏の羽が落ちている。
「神話の鳥でも羽落ちるんだな…」
「そりゃそうですよ。生き物なんですから」
生き物と言われれば、ソノの耳と尻尾、ずっと気になってたんだよな。
触ったら怒られるか…?
「なあ、ソノ…」
「ダメですよ」
「まだ何も言ってない」
皆、獣人に会ってもいきなりモフろうとしちゃダメだぞ!
殺されかけるからな!!!
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