第58話 17歳 六花探して五千里?

 世界樹の高さが、軽く3万キロを越えていた。六花のある場所は、高度2万キロ付近である。


 私はいま、自分自身の世界樹の登頂記録を塗り替えている。いままでの最高は、自分のMy弓を見つけたとき。そのときは、三千里くらい上に登ったから、私の最高記録は一万二千キロくらいだった。


 五千キロは高度の記録を塗り替えた。あと三千キロ登れば、Τιγριςのいる場所辺りにつくのだろう。


 たしか、前世で、博物館に、昔使われていたという国際宇宙ステーションの一部が展示されていた。たしかその高度が地球から405キロとかだったから、すでに私は、宇宙的な場所に私はいるのかもしれない。まぁ、世界樹の周りには空気があり、温かい春の気候って感じでとても快適な旅である。


 私の家のある下層から登っていくのに半年は登っていく必要があると思ったが、そういうことはなかった。移動技術も発達しているのだ。


 私は、世界樹の枝から枝へと縦方向に繫げられたカゴの上に座っていた。カゴと言っても小さなものではなく、十人乗りのゴンドラくらいの大きさだ。そのカゴに乗って私は世界樹を登っている。


 世界樹の上に行けばいくほど、ロープが張り巡らされている。そして、盛んに荷物などの運搬が盛んにされているようだ。


 世界樹の枝が葉を付けず、ただ平べったい場所などもあった。そこの枝は、大きなデコボコがあるみたいで、その凹みの部分には水が溜まっている。


 世界樹の枝が一つの森となっているのだ。大きな湖があり、水が流れ、鳥が優雅に泳いでいる。魚もいるようだ。


「ほら、そろそろ時間だぞ。この光景は見ていったほうがいい」


 ゴンドラの番人さんが、世界樹の上の方を指差す。世界樹の上の方が眩しいな、と思うとその光が急速に下方へと広がっていく。


 ゴンドラもあっという間に光に包まれた。


「ほら、朝陽だ」


 太陽が星の影から出て来たようだ。星というのは私たちの住んでいる星だ。その影に隠れていた太陽が星から顔を出したのだ。


 一瞬にして光に包まれる。


「青いですね〜」


 朝陽が顔を出した星を見上げる。海が見え、陸上が見える。星は本当に球体というか丸かった。


「こっからだぞ?」とゴンドラの番人


 世界樹の枝の上の湖に太陽が光を当てる。さざ波立っていた湖で、太陽の光がまるでダイヤモンドのように乱反射していた。  


「あっ!」


 そして湖の上にいた鳥たちが一斉に空へと飛び立つ。


「あの鳥たちは、朝になると二つ上の枝へと帰って行くんだ。そこに巣があり、そこで昼の間寝ている。また、夕方になるとこの湖に降りてきてエサを食べるんだ」


 数千という鳥たちが、湖の上をぐるぐると旋回している。大きな一つの群れなようだ。


「あれ? ずっと回っているだけですけど?」 


「まぁ見ていなって。もうすぐだから」とゴンドラの番人さんは、弓矢を手に取りながら言った。


 ん? 風? 私はどこからか風が吹いてくるのを感じだ。


「ほら、来たぞ。ちょっと揺れるぞ」


 ぐぉぉぉ〜という音と共に、大きな風が吹いてきた。ゴンドラも揺れる。


 世界樹の幹に沿って風が登ってきたのだ。上昇気流だった。


「すごい……」


 鳥たちは、空中を旋回しながら上昇気流を待っていたようだ。


 上昇気流をその羽根で捉えた鳥たちは、滝でも登るかのように、上昇気流に乗って垂直に上昇していく。あっという間に私たちが乗っているゴンドラを横切り、追い越していく。


「もうあんな高いところに」と私は上を見上げながら言った。


「すごいだろ。この辺りの枝ならでは光景だ」


 ゴンドラの番人さんは自慢げだ。


「それにだ。あの鳥は旨いんだ。せっかくだから食べていくと良い。上の枝に到着するまであと数日はかかる」


 ゴンドラの番人さんはロープを手に持ったロープを引っ張り上げている。そして、そのロープの先には、矢に刺さった、先ほどの鳥が一匹いた。


 どうやら、上昇していく鳥を一匹仕留めたようだ。なるほどである。地上なら、普通に矢で飛ぶ鳥を落として、森の中を探せば良い。


 だけど、世界樹の上の方だと、落ちていった鳥を探しに地上まで行くなんて無理だ。だから、矢にロープを付けているのだろう。そうすれば、射たあと、そのロープをたぐり寄せれば獲物も一緒についてくる。


「ご馳走になります!」と私は返事をする。


 ゴンドラの番人さんお手製の鳥鍋を食べながら、世界樹からの見える景色を眺める。


 六花を求めての私の旅は続くのだ。それに、こんな素敵な光景が見ることができるなら、やっぱり【開拓者】を目指すのもよいかもしれない。


 世界樹の頂上には何があるのだろうか?  


 私は、ようやく登りはじめたばかりだ。このはてしなく高い世界樹を……

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