第71話 ナキと中年

 出てきたのは、顔色の悪い美少年? 髪はブルーで長く、後ろで一つに纏めている。目の下に涙が流れたような、青い入れ墨の様なものがある。身長は賢人と同じくらいか。


 そして、

「鬼か?」

 髪で生え際は分からないが、多分、額から小さめの角が二本。


『俺はナキ、鬼って言われるのは好きじゃない』

 着てる服は、袴のようだが、足元が絞ってある?

 

「で? ここのボスがお前か?」

 鑑定ではランクが出ないな。


『違う。見ての通り、ダンジョンクリアーおめでとう。この魔方陣に乗ればすぐに帰れる』

 とゲートの後ろにある、魔方陣へ案内しようとする。


「いやいや、俺らは守護者に会いにきたんだ、帰るのはそれからだな」

 

 “ゴゴンッ!”


『言う事聞けよ、潰すぞ?』

 目の前に現れて、何処から取り出したのか、身長程ある金棒を振り下ろす。


「事後報告はおかしいだろ? 振り下ろす前に言えよ」

 ちゃんと避けたはずだが、右肩にかすったようで、血が流れている。


「カズト!」

「あぁ、そのまま離れてくれ。喋れる奴とはちゃんと勝負したいからな」

 賢人とボブが美羽を連れて離れていく。


「カズト、勝ってよ」

「はいよ!」

 肩のキズは再生してきたな。


『化け物か?』

「そうだ」


 金棒の横振りを、前にジャンプして避けると同時に、ナキの顔面を蹴り飛ばす。


『ガッ! くっ、このやろう!』

 上に飛び上がり、金棒を振り下ろしてくるが、地面にクレーターを作るだけ、


「そんな大振り、当たるわけないだろ」

 と殴りつけるが、


『じゃあ、当たるように振ってやるよ』

 殴られながら金棒を横に振ってきやがった、


「ゴハァッ!」

 吹っ飛んでゲートを巻き込んだな、埃がすげぇ。


「ゴハッ! ゴホッ、いてぇな」

 何本かいってるな、さすが鬼の力ってか。


『おらぁぁ!』

 煙を吹っ飛ばして金棒を振るが、


「だから大振りなんだよ!」

 避けて、ガラ空きの腹に拳を突き刺す、


『ガハッ!』

「いっっだぁぁ!」

 身体が痛いが、そのまま振り抜いて、ナキを殴り飛ばす。


“ドゴォン……”


「グァッ、……クッソいてぇ」

『ガァァ……てめぇはぶっ潰す!』



 賢人side


 離れて見ている俺達は、


「兄さん、なんで回復しないんだ?」


「知るかよ、そんな気分なんだろ」

 そんなのみんな思ってる。


「……カズト」


「カズトさんが負けるわけないよ。大丈夫」


「アヴゥ」


『男が泣いたらダメだぁ、ちゃんと見とかねぇとな』

 俺の横には、大きなオレンジ色の身体、


「誰だよ!」

 距離を取る俺達に、


『このダンジョンの守護者って奴だな、ショウキって言うだ。ここで一緒に見ていいか?』

 と笑顔で言ってくる。


「はぁ、いいんじゃねぇ、あんたのダンジョンだろ?」

 俺はショウキの横に座る。


『……怖くねぇのか?』


「なら聞くなよ、別のとこで見るのか?」

 みんな座り直すのを見て、


『いんや、ここで見る』

 と座り直す。


 全員の目線は、戦ってる二人にそそがれる。


 カズトside


『潰れろぉお!』

「お前がなぁ!」


 “ガガンッ!”


『ゴハァ!』

「グァッ!」


 ナキは金棒をとっくに放り出して、俺と同じ、拳で勝負している。


「金棒じゃねぇと効かねえぞ? 待っててやるから拾ってこいよ」


 ナキの額にビキリと血管が浮き上がる。

『テメェこそ、お仲間呼んでこいよ。あんなウンコ共でもいないよりマシだろ?』


 仲間を侮辱しやがったな……

「お前がウンコだろ? 死んだら便所に流してやる」


『あぁん? テメェがウンコだろ? 畑にまいてやるから、さっさと潰れろ』


「お前がウンコだ」

『テメェがウンコだ」


「『あぁん!」』


 “ガッガッガッガガン”


 クッソ、いてぇぞ。ったく!

 頬に拳が当たったまま、一歩前に出て、

「おらぁぁぁ」

 ナキの腹に思いっきり拳を当て、

『ガァァ』


 ふっ……り抜く!

「あぁあぁぁぁ!」

『グァァアァア』


 吹っ飛んだナキは、倒れて動かない。


「っし! 勝ちっしょ!」

「ーーカズト!」

 美羽!? い、……今は。


「美羽さん! 絞めちゃダメ! 兄さんが死んじゃいますって」

 あ、……ダメだ。

「兄ちゃんも気を失ったかぁ」

 




「あ、カズト」

「……ぉ、美羽」

 俺は気を、


『お? 起きただか?』

「っんなっ! なんだ!」

 デッカイ、ミカン? 笑顔?


『ビックリさせてしまったか?』

 

 賢人がやって来て、

「そりゃ、そんな顔、寝起きで見たらな。兄ちゃん、これはショウキ。このダンジョンの守護者らしいよ」


 へぇ、

「賢人は仲良くなったみたいだな。俺はカズトだ。よろしくな、ショウキ。……で? ナキは?」


『まだ気を失ってるだ、ナキが全力出すなんて、よっぽど楽しかったんだろうな』

 

「そりゃよかったな。んで、ショウキも鬼か? ナキは鬼が嫌いみたいだったが?」


 困った笑顔のショウキは、

『カズトは四神って、知ってるか?』


「どの四神の事だ? 東西南北を司る神の事か?」


『いや、……遠い昔、この日本が四つに別れていて、鬼が守神として過ごしていた時の話だ』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る