第67話 ランクSと中年


 どーしてこーなった?


 ノセがムキムキマンに、しかも変な筋トレの仕方だったのか、偏った筋肉が気持ち悪い。


 あれか? あれしかないよな。渡した俺としては、スリムになる予定だったんだがよけいドワーフに……


「みて下さいよこの筋肉! 胸だって動きますよー」

 とピクピクしている。


「ハッキリ言うぞ? キモい! アンコを見ろ」

 冷めた目でアンコが見ている。


「ゾ、ゾクゾクしますね!」

 ……筋トレし過ぎてMに目覚めたか? それとも最初からか……


「賢人ー! コイツに筋トレ教えてやれよ」

 引いてる賢人にバトンタッチだ。


「うーん、そんだけついたら落とすのにも時間かかるよ? バランス悪いから、他を鍛えるとかかな」


「今よりマシになればいいだろ?」


「だね、ウザいムキムキマンとか、誰得って感じだし。こい! バカノセ!」

「イタッ! 痛いよ!」

 とノセの耳を引っ張っていった。


「……斎藤さんに渡さなくてよかったな」

 やっぱり効果を確認してからの方がいいな。


 さてと、

「ボブとモッチーだけか。どうする?」


「兄さん! 久しぶりっすよ?」

 そう言えばボブと賢人は久しぶりだったな。


「うん、久しぶり。でどーする?」


「ちょっ! おかしいおかしい! なんか無いんすか?」

 今日は食い下がるな、何か聞いて欲しいのか?


「無い。モッチー今日はどうする?」

 絶対聞いてやんなーい。


「カズトさん、悪い顔してるよ? ボブ、どうしてたの?」

「あーあ、久しぶりにボブいじりがしたかったのに」


「鬼ッ! ……しょーがないから教えてあげ「ならいいよ」……聞いて! お願いだから!」


「ほら、さっさと話せよ」


「最近は賢人と2人でダンジョンに行ってたんですよ。だいぶレベルも上がったんですから!」

 ほぉ、どんなもんかな。


「じゃあ、秋葉原にいくか? ボブの成長も見たいし、東京ダンジョンだ!」


「「うい」」


 

 やってきた東京ダンジョン、十五層スタート!


「ボブ! ガードだけじゃ敵は倒せないぞ?」

 華麗に受け流す……だけのボブ。


「ちょ! ちょっと助けてぇ!」

 ん? 

「強くなったのを見せるんじゃなかったのか?」


 近寄って、シェルフラワーを攻撃しながら聞くと、

「は、話は後っす! 倒しましょう!」


 なんだよ、楽できると思ったのに。


 倒してしまうと、

「マジヤバかったっす。てか俺はタンクですよ? 攻撃もしますけど、ヘイト稼いで敵を引きつけてくのが役目だと思うんです」


「タンクだとそれでいいんだが、さっきのシェルフラワーは手数が多いから、防御だけになってたろ? それじゃつまんないだろ? あとゲームじゃないんだから、防御が出来ない敵が出てくると思うぞ?」


「え!? マジっすか?」

「ちなみに、このダンジョンの十九層に出てくる地蔵が光線撃ってくるけど、その盾貫通すんじゃねぇ?」

 多分だけどな。


「うーん、ゲームの様だけどリアルだもんね。防御力の高い装備も必要だけど、出来れば受けない方がいいのは納得かな」

 モッチーも理解してくれたな。


「え? ここ最近の俺の頑張りは……」


「無駄ではないだろ? 受け流すのが出来るって事は見えてるんだろ? なら避けれるだろ」


「あ、そうっすね。わざわざ受けに行かなくていいんすもんね」

 すぐ切り替えるのはいい事だ。


「それに確認終わってる場所ならタンクで動いても問題ないだろ。油断はしないようにしないといけないけどな」


「うっす! やっぱり兄さんや師匠といるといいっすね。俺と賢人だと同じ方向しか見てないんで」

 

「それが分かってるんなら大丈夫だろ。てかドロップと宝箱拾うぞ」

 もし、俺らがいなくても気付けるだろ。



 十六、十七層は虫と泥、ボブも攻撃に参戦して、三人でなんなく突破。


「次は……Gだ」

 そう、アイツだ。


「え、Gって……Gですか? 流石にそれは」

「ムキムキのな、速い強いキモいだ。心してかかれよ!」


「「いや、それ最強でしょ?」」

 コイツら、


「俺はこの前、一人で戦ったんだぞ……四方八方からくるムキムキのG。だが今日は違う! 三人いればなんとかなる! しかもタンクがいるしな!」


「うぉーい! さっきと言ってる事違うぞぉー」


「そうだな、タンクがいるもんな」

 モッチー……心の友よ。


「うぉーい! 師匠までどーしたぁー? そこで握手はおかしいぞー?」


「「よし、行こう!」」

 モッチーと二人で、ボブの腕を掴んで引きずって行く。


「ちょーっとまてぃ! え? ちょっと待って! いつものジョーダンでしょ? 待って! たぁすけてぇー!」


「「ドナドナドーナードーナー……」」

「売るなぁー!」


 とやって来た十八層。


「お前ら上に戻れ!」

 おかしい! 妙な気配がする!


「え? カズトさ!」

 “ガッ!!”

「グッ! Gに触っちまったじゃねぇかよ」

 なに、勝手にモッチーに殴りかかってるんだ?


 俺でギリギリ見えるくらいか、ヤバイな。

『ギヂギヂッ、ギヂ』

 くっそキモい声出してんじゃねぇぞ!


「オッラァ!」

 腕を掴んだまま押し返していく。


「ボブ! いくぞ!」

「で、でも兄さん」

「俺らじゃ足手まといだ! 上で待ってる!」


 遠くで聞こえる声、さすがモッチー、ナイス判断だ。


 あとはコイツがなんなのか?

「って事だよ、っな!」

 “ガゴッ!”

 押してた腕をそのまま使って、地面に叩きつける。


 そのまま鑑定、

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

黒き流星・ゴキブランダー(ネームド)ランクS

レベル1

Gの超特殊進化個体。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


 いや、色々ツッコミどころが、

「ッ! 飛んでやがる……キモさがクライマックスだな」


『ギヂヂッ、ギヂ』

 バッタはヒーロー化するとカッコいいのに、Gは悪役っぽいよな。


 てかあの黒光りと何気に腕が4本あるのがもう嫌だ。……ん? アイツ、組んでる2本の腕は使わないつもりか?


「ふぅ、怒っても仕方ないか。まぁ、倒された時に後悔してくれ」


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