第66話 アンコと中年


 東京ダンジョンから帰って来たら、アンコのようすがおかしい。

 部屋から出て来ない。


 お土産も、買って来たんだが。


 とりあえず何があったのか、モッチーなら知ってるかな? マロンも何か隠している様だし。

 林さん達の様子も見に行かないとな。



 ラボに入るとモッチーはいない、やっぱ家の方かな? 扉を通り、家の中に入ると外から音が聞こえる。


 ドロップと土玉を渡してこようと家の外に向かうと、


「うぉっ! 何してんだ? こんな所で」

 

 階段下の狭い所に挟まっているモッチー。

 引っ張り出すと、手にはボロ切れと壊れたおもちゃ?


「どーした? てかただいま」

「うっうぅぅぅ!」

「こえーよ、どーしたんだよ」

「アンコちゃんがご乱心だ」


 アンコが? って、それを聞きにきたんだった。


「……お前、何かやらかしたのか?」


「……したといえばした。俺ではないがどーしようもない」

 いつものモッチーじゃないな。


「はぁ、いってみろよ、俺が出来る事ならやってやるから」


「本当か? じゃーアンコちゃんと結婚を」

「できるか! あんなちっちゃい子と!」


「……アンコちゃんがカズトの好きな身体にってノセにいうから、あの身体になったのに……そのせいでノセは、今北海道ダンジョンに放り出されてハウスに入れなくなっている」


「……だいたい分かった気がするが分かりたくないなぁ。

 アンコが言ってたのは恋愛対象ってことか? 嫁がいるから他の女は要らないぞ」


「そーですが、もう身体の再構築は無理らしく、半狂乱のアンコちゃんがせっかく作ったクララの服を」



 ボロ切れは服だったのか、

「東京ダンジョンで、年齢詐称のスキルスクロールがあったが使えるか?」


「んーどうだろう、若返りの妙薬の逆があればいいのに」

 歳をとるのか? 欲しくないけど、


「探せばあるんじゃないか?」


「そっか、そだな! それをアンコちゃんに……カズトが言って来てくれ」


「なんでだよ」

「俺はあれから口も聞いてもらえないからだよ!」


 あまりにも情けないので、

「はぁ、仕方ねぇなぁ。行ってくるわ」

 とアンコの所に、


「アンコーちょっといいか?」

「……はい」

 ドアから出てきたのは、いつものキチッとしたアンコだ。

 ちょっと安心したわ。


「ぶっちゃけて言うと、アンコは可愛いぞ?」


「……子供としてですよね?」

 ……それ以外の何があるんだよ。


「まぁそうだな、でモッチーとノセが、若返りの妙薬の逆があるんじゃないかって「あるんでふか!」」


 ……噛んでるし。


「絶対とは言えないが、あるんじゃないか? そろそろノセも許してやれ」


「分かりました! あいつらを使ってなんとしても探してみせます!」

 これでいいのか? まぁ元気が出たみたいだし。


『ノセ、なんとかアンコの許しが貰えたぞ、北海道ダンジョンの扉の前な』

『モッチー、話通したからラボな!』

 と念話して、北海道ダンジョンの扉を開くと、


「お兄さん! ぼ、僕ガハッ!」

 ……アンコってけっこう強いのな。

 

 ボディーに一撃喰らって、屍になったノセを、アンコが引き摺りながらモッチーラボへ入っていった。


 俺もラボに入ると、

「お前らは私に嘘をついた」


「「サーイェッサー」」


「とても傷付いている」


「「サーイェッサー」」


「なんとしても逆若返りの妙薬を手に入れるのだ!」


「「サーイェッサー」」


「よし、いけ!」

「「ゴーゴーゴーゴー!」」

 とハートマンが繰り広げられる。

 ……アイツらはどこに行ったのだろうか?


 まーいっか、と扉から一軒家に戻り、家の外へ。


「……ここまで変わるか」


 なんという事でしょう、

「おーカズト、どうだこの出来は?」


「匠の技ですね。凄いとしか言いようがない」

 

「まーあとは細々とした作業だからなぁ、ゆっくり見ていけよ」


 東京土産を渡すと、

「これなんだ? 泥と泥だんご?」


「泥は石なんかを混ぜると、コンクリートより固くて軽いものになるようです。

 土玉は畑に入れると養分としていいみたいですよ」


「ダンジョン産か?」


「そーです、軽い仕事や家庭菜園にでもと思いまして」


「こんなに使いきれないぞ?」


「皆さんで分けて下さい、その為に持って来たんですから」


「そうか、畑持ってる奴もいるし、ありがたくもらっとくよ、まぁゆっくり見てってくれ」

 とみんなに渡しに行った。


 俺は家をブラブラしながら見ていたが本当に素晴らしい。

 ここに住んでもいいくらいだな。



 今日は斎藤さんが来ていたみたいで、


「お疲れ様です、最近どうですか?」

 と挨拶しに来てくれた。


「お疲れ様です、東京のダンジョンのほうにいってましたよ」


「東京ですか、もしかして美容グッズとか?」

 有名なのか?


「その様で。嫁と一緒にとってきましたよ。

 美容グッズはないですけど、警察でこれなんか使えるんじゃないですか?」

 とG印の筋トレグッズを出す。


「なんですかこの量は! あ、ダンジョン産ですか?」

 まだ出回ってないんだろうな。Gの事は黙っておこう。


「あげますよ、効果のほうはどれくらいか分かりませんけど、使って下さい」


「千社さん、お聞きしますがこれって何層辺りの?」


「んー、秘密ですが、18ですよ」


「えぇ! 本当ですか? 絶対高額になりますよ! 受け取れませんよ!」


「あぁ、どーせ使わないんでワンセットだけでも、持っていってください。効果を教えてくれればいいですし、お土産ですよ」


 まぁ、効果はあるだろうが、使わないものを持っててもしょうがないし。

 真面目な斎藤さんならちゃんと使ってくれるだろ。


 マジックポーチに入れて渡すと、

「いや。流石に高額すぎて貰えません」

 真面目だな、


「んじゃ、その内借りにきて下さいよ。いつでもいいんで、ね?」


「分かりました、その時はレンタルお願いしますね」

 まぁ効果も見てないしな、ノセのポニョポニョボディーがどうなるか見てからでもいいな。


 てかそろそろ時停倉庫を片付けないとなぁ。


 要らないものがドンドン増える。


 斎藤さんと別れて、モッチーラボに帰ると出て行ったはずのノセがいた。


「どうした? 見つかったのか?」


「モッチーさんと話して、お兄さんに手伝ってもらった方がいいって……お願いします!」

 ちょうどいいか、

「ほれ、今日はこれ使って筋トレしてみろ? ダンジョンは一緒に行くけど、今日は休むぞ?」


「はい! じゃあ明日からよろしくお願いします。筋トレ頑張りますねー!」


 と走っていった。


 ハウスに帰ると、アンコが元気になっていつにもましてべったりしてくる。


 まぁ可愛いからいいけどな、お土産を渡すと飛び跳ねて喜んでいた。

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