第49話 自己中女と中年


 まだ、冒険者になったばかりの人には一層もキツイらしく、俺はいま間引きをやっている。


 教える気はサラサラないので見える所で戦って見て覚えてもらう。


 二層にいこうとした時に階段で座ってる女の子が……


 関わりたくないので避けて通ると、後ろから、


「困ってるんです! なんで見ないフリするんですか!」

 と逆ギレされた。


「まだ一層だからすぐ帰れますよ?」


「話聞いてくれるんですか?」

 と近づいてくるので、


「いえ、急ぐので、お帰りはあちらです!」


「聞いて下さい、私冒険者になって・・・

 と聞いてもないのに話し出す、逃げようにも服を掴まれていて、払い退けるのもあれだし……嫌になってきた。


 話を纏めると、スキルを取得したが職業変更が混んでたから、ダンジョンでレベル上げてからにしようと思った。

 一層でウルフに追いかけられてここにいると、


「自業自得ですね、じゃあ!」


「離れません! どうにかして下さい! お願いします!」

 と、きた、まじめんどい。


「じゃぁ職業変更してあげますよ、スキルは何をとったんですか?」


「アイテムボックスです」



「……ばっかじゃねーの? SP100しかねーのに全部使う馬鹿がどこにいんだよ! ここか!」


「馬鹿ってゆーほーが馬鹿なんですぅー」


「うざっ!」

 先に進もうとすると、


「だーかーらー離れないって言ってるでしょ!」


「武器は?」「無い」「防具は?」「見ればわかるでしょ」


 はぁ、

「じゃぁ送ってくからもう帰れ」


「いや!職業変えてくれるんでしょ?」


「変えても一緒だ、武器も防具も無し、冒険者は自己責任だ。送ってやるから出直せ」

 掴んでる手を引っぺがす。


「少しくらい親身になってよ! せっかくあのカッコいい装備貰えるんだから!」


「知らねーよ! どーせ動けねーんだから、ギルドでちゃんと勉強してこい!」

 こんな自己中は初めてみた。


「うっさいな、ジジイみたいな事言ってないで、職業変えれるんでしょ? さっさと変えてよ」

 ……は?


「なに黙ってんのよ? いいでしょ、減るもんじゃないだし」


「ギルドでは、来てくれた冒険者に悪いからって、ギリギリまで職業を変更してる人もいるんだぞ?」


「そんなん仕事でしょ? やるのが当たり前でしょ!」


 こいつと喋ってるとおかしくなりそうだ。

「……お前の言い分はもういい、戻らないなら置いていく。どうするんだ?」


「は? 女を置いていくとかマジないんですけど! それでも男なの?」


 め・ん・ど・く・さ・い!


「ぎゃァァァアァァァァァァァァ……」


 担いで、久しぶりにダッシュして一層の外へ。


「ずうずうしいにも程がある! 俺は他人が嫌いだ! お前みたいな奴は特にな!」


 と投げ捨てて、大声で叫ぶとギルドから横川さんが走ってきた。


「ど、どうしました? 千社さん落ち着いてください。」


「あぁ、横川さん、すいません、ちょっと感情的になってしまったようで。それではアイツら待たせてるんで、俺は行きます。また帰りに寄りますんで」


 とダンジョンに帰って行く。


 あの女の子は声も出せなかったようだ、女の子に怒るとか最低だな。


 ……イライラするからちょっとダンジョン内の掃除でも念入りにするか。


 それから30分で十層まで来た。ようやく落ち着いて、十一層から無心で敵を倒しドロップを拾い進んでいく。


 十八層でようやく合流して、気持ちが落ち着いた。


「兄ちゃん大丈夫? なんかやなことあった?」


「ん? 大丈夫だ、ストレス発散はして来たからな。ここからはガンガン行くぞ!」


 てか十三層が最高って聞いてたが、会ってないな、まだ先にいるのか?


「お前ら、自衛隊とかほかの冒険者とあったか?」


「十六層で死にかけてたから、ヒールかけて魔法陣で返したよ。十六層はヒルが大量だったからやられたんじゃないかな? 一応死んだ人は居ないから」


「そっか、んじゃ俺らがいま最下層なんだな」


 ここはファングタートルとニードルフィッシュらしい。ランクはEで敵ではない。


 むしゃくしゃするので、見つけては突きまくっていた!


「兄さんなんかあったな」


「久しぶりにあんなカズトさんみたわ」


「まぁ兄ちゃんが気にするなって言ってるから、気にしないほうがいいよ」


「だな」

 とカズトの扱いを知ってる4人は、いつもより楽だと思いながら付いていく。


 十九層、……牛?


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・

ヴァイオレットウォーターバッファロー

ランクD レベル50

紫の体毛の水牛、角で攻撃してきて刺さると麻痺毒を受ける。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「俺が行くわ!」

 と目で追いつけないスピードでバッファローの首が飛んでいく。


 賢人がマップで確認するも赤点がドンドン消えていき、目の前にはほとんど居なくなっていた。


「誰だよ兄ちゃん怒らせたの……」

 とドロップをみんなで拾い集めていると。


「あぁー、スッキリした!」

 といつもの顔に戻ったカズトがそこに居た。


「兄ちゃんも拾って! 遠くまで行きすぎだよ」


「わりぃ、遠くのは俺が拾ってくるわ」

 と行ってしまった。


「戻ってほんとよかった、美羽さん居ないときはヤバイよ」


「兄さんこれでようやくとか……」


「僕見えなかった……」


「ノセ、俺らも見えなかったよ。たぶんいつもはステータス操作である程度落としてるね」


「だから、俺らに兄ちゃんはレベル上げさせてるんだろうね。ブレーキ役がいないから、……でも、なんかあったら俺らが絶対止める!」


「「「だな!」」」

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