第17話 ダンジョン 慣れする中年

 俺は髪を後ろで結ぶ、髭は顎だけ残している。


「そろそろ髪切れば? 顔色も良くなってきたし」


「んー、別にまた今度でいいかな? めんどくさいし」


「この前も言ってたよ、そーだ、昔みたいに賢人君に切って貰いなよ! それなら人に会わなくて済むし」


「んー、それなら別にいいかな、今度ね」


「大丈夫、私が忘れないで賢人君に言うからね」


 どうしても髪を切らせたいらしい、まーうざいから切ってもいいけど、他人と目が合うのがやだな……


「まー行きますか? ステータス戻した?」


「バッチリ! 今日も宝箱有ると良いねぇ」


 不思議な事に場所はバラバラだが時々宝箱が出現しているのだ。

 一層だとショボいけど今は三層でレベル上げをしている。



 しかも下に行くほど階層が小さくなっているみたいで、逆ピラミッド型だと十層辺りで終わりの気がする。



 まーまだ四層までしか行ってないし、先に進むのは全員揃ってからと決めているからボチボチやっている。


「どーする? 一層から周っていく? それとも三層にすぐ行く?」


「勿体ないから周って行こうよ! 一層と二層はお願いします」



 一層はゴブリン、二層はデッカいいも虫とコガネムシ、三層はスライム、四層はコボルト、何故かスライムが三層。

 このスライムがやっかいで武器とかも溶かすし核を潰さないと死なない。

 打撃も、魔法もボール系は効きづらい、剣で核を突くか切るか。


 魔法のアロー系でいけるんだけど、美羽がスライムは罪悪感がないらしく譲る事になっている。


 美羽は聖魔法の、ホーリーレイってレーザービームですぐ倒せるがMPがすぐ尽きるみたいでMPポーションが必須だ。


 俺も聖魔法取りたいけど灰色のまま、僧侶に転職しないと多分取れないんだろな。


 みんなも取れないらしいし、賢人から魔法剣士を進められてるから今は魔法使いだけど、少し遠回りしてもいい気がする。


「んじゃりょーかい、時間見ながらゆっくり行きますか! 左回りね」


 地図を見なくても一・二層は道順バッチリ、敵の気配も分かるからたまにチェックするだけで散歩気分だよね。



 ゴブリン三体が煙に変わる、


「やっぱ、目が追いつかない。数人カズト速すぎ」


 ドロップ拾いながら文句を言う嫁。


「ちゃんとやらないとケガするからね、余裕は出さないよ。美羽もレベルが上がれば見えるでしょ」


「んー、賢人君も速くて見えないんだよね、2人して気づいたら終わってるし」


「賢人は職業もだし、あいつの装備もスキルもエゲツない。

 兄としては安心だけど、何処に向かってるのか分からん」


 賢人はスピード重視でスキルの操影術も使ってまじ見えなくなる時がある。


「厨二病だもんね、家でポーズの練習とかしてそう」


「してるかも…って、ハァッ!」

 ゴブリン2体が煙に変わる。


「お疲れゴブリン!」


「美羽は見てるだけだけどな」


「応援してるし!」


 と駄弁りながら進んでいく。

 今はまだいいけど。


 はぁ、あと5カ月きったんだよな……


 3層、


「ホーリーレイ! もー1発ホーリーレイ!」

 スライムが溶けていく。


「MP1発どれくらい?」


「25だね、レベル4で覚えたけどレベル2で覚えたホーリーアローは当たらなくて使えなかった」


「ちゃんと練習すれば真っ直ぐ飛ぶし威力もそこそこあるから慣れるまで使い続けてれば? でも25か、レーザーだし、高威力で貫通力はあるけど、あんま連発できないね」


「だね、わかった、MPローポーションならたくさんあるし、少しはアローも練習するよ。レベル上がればまた違う魔法覚えて強くなれるしね!」


 美羽も最近変わってきて強くなりたいらしい、フォローしたりパーティーに入って近くに居れば経験値入るみたいだからそんなに頑張る必要はないと思うけど違うらしい。



「そろそろ帰ろうか? いい時間だし帰り道もあるしね」


「うん! 今日もよく働いたー!」


 ドロップ拾いながら笑顔で俺に渡してくる、ダンジョン産はとりあえず俺が預かる事になってしまっている。


 管理が大変なんだけど……



 無事家に帰って、飯を食いながらテレビを見ている。

 まーちょっと前まで、テレビの刺激も嫌で見れなかったから、回復しているのだろう。


「あ、お母さんからだ。ちょっと電話してくるね。 もしもし……うん……」


 美羽のお母さんからか、この時間に電話は珍しいなぁ。


 少しして美羽が戻って来た、なんかあったっぽいな。


「お母さんなんだって? 元気してた?」


「元気なんだけど、お父さんが……冒険者の資格取って来たって」


「お? おぉ……え! マジか? なんで?」


「うちの納屋に扉があったらしい。幸い扉閉まっててモンスターも出てなかったんだけど、扉に鍵してから、お父さんすぐ資格取りに行ったみたいで」


「で、資格取れちゃったと、よくモンスター出てこなかったね? でも鍵したならそれだけでも少し安心したよ。警察には?」


「言わないって。自分で守るって聞かないらしい、足も悪いのに……」


 美羽のお父さんは行動力が凄く、市長にも立候補しそうになったくらいの人だ(流石に家族全員から止められてやめたらしいが)


「すぐには無理だけど、来週辺り美羽の実家に行こうか? 里帰りも随分してないしね」


「いいの? 数人カズトが無理したらお母さん泣くよ?」


「大丈夫、最近体調良いの知ってるでしょ? それに俺も凄い心配だし。俺らが行くまで、ダンジョン入るの待っててもらってよ」


「うん……ありがとう。……電話して来るね」


 俺も親孝行が少しは出来るかな、来週は美羽の実家だから準備はちゃんとして行かないとな。

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