39話目、闇の教団

 スライム狩りである程度レベルを上げたので、そろそろ魔王を倒しに行こうと思う。


 と、言いたいところだが、すぐには倒しに行けない。


 というのも、魔王城には瘴気が漂っており、このままでは近づくことができない。どうすれば魔王城に入れるようになるかというと、残りの四天王をすべて倒せば入れるようになる。


 残りの四天王を倒しに行こう。




 俺たちは四天王の一人、大教祖イーブルのいる闇の神殿の前までやってきた。


 闇の神殿――

 闇の教団の総本山だ。とある山の上に作られている。


 闇の教団は、四天王の一人である大教祖イーブルが人間を洗脳し支配するために作った教団だ。世界各地で少しずつ信者を増やしており、大きな組織となりつつある。


 謳い文句は、教団を信じればあらゆる不幸から守られる、だ。


 実際に、教団に入信すると魔物に襲われなくなる。当たり前だ、イーブルが指示すれば、魔物は教団の信者は襲わない。もちろん指示を無視する奴や、そもそも話を聞かない魔物もいる為完全ではないが、かなり襲われにくくなるだろう。


 それが評判になり、信者が増えているらしい。


 どうして教団に入信すれば魔物に襲われないのか。ちょっと考えれば簡単に察することができそうなものだが、察することができる人間ばかりではない。


 溺れる者は藁をも掴む。


 もちろん、多くの人間がこの闇の教団を怪しんではいる。しかしそれでも信者は増え続けてしまっている。人は不安になると、何かにすがりたくなってしまうということだろう。そして、教団はそれに付け込んだ。


 闇の教団は人を不幸にする。早く倒さねば。




 さて、どうやって大教祖イーブルを倒そうか。普通に闇の神殿に乗り込んだところで会うのは難しいか? 部下の護衛とか信者とかが、たくさん出てくるだろうし。


 神殿の前でどう攻略するべきか悩んでいると、一人のエルフの少女が俺たちに近づいてきた。吸い込まれそうな青い瞳の少女、深い青ディープブルーだ。


「教団に入信に来たの? やめたほうがいい」

「いや、俺たちは入信に来たわけじゃない。大教祖イーブルを倒しに来たんだ」

「なぜ?」

「大教祖イーブルは魔物だ。教団を大きくして、なにかを企んでいるに違いないからな」


 俺がそういうと、深い青は僅かに目を見開いた。驚いたのだろうか? 深い青はあまり表情を変えないキャラだから、いまいち感情が読めない。俺は尋ねる。


「君はどうしてここに?」

「里のみんな、捕まって奴隷にされてしまった」

「それを助けるために?」

「そう」


 俺が知らない展開だな。しかしそうか、だから深い青が里の外にいるのか。深い青は隠しキャラだ。エルフの隠れ里を見つけ出さなければ仲間に出来ないレアキャラだ。


 エルフの隠れ里が何かのきっかけで見つかってしまったのか? それで里のみんなが捕まって奴隷にされてしまったとか? どうしてそんなことに? 原因を考えても始まらないか。とにかくそのエルフたちも助けよう。


「なあ、手を組まないか? 君の力が借りられればイーブルを倒すのが楽になる。君も仲間を助けるには人手が欲しいだろ?」

「ブルー」

「え?」

「私の名前。手伝って」

「ああ、よろしくな、ブルー」




 どうやって闇の神殿を攻略し、イーブルを倒すか。俺の考えた作戦はこうだ。


 まず、裏口からこっそり地下で強制労働させられている奴隷たちの元へ行く。そこで奴隷たちを次々開放し、闇の神殿を混乱に陥れ、その隙にイーブルの元まで一気に駆ける。そしてイーブルを叩く。


 ちなみにゲームの時はどうしていたかというと、実はゲームでは主人公たちは地下で強制労働させられる。


 盗賊ザザという人物が盗みを働いている場面に出くわし、盗みの罪を擦り付けられてしまう。そして捕まって奴隷になってしまい、最終的に闇の神殿の地下で強制労働させられる。強制労働しているときにザザが助けに来て、それで闇の神殿を攻略、ついでにイーブルも倒すというのが本来のストーリーだ。


 わざわざ捕まって強制労働とかさせられたくないので、このイベントに出会わないように俺は注意していた。そのせいで知っているストーリーといろいろ変わってしまったかもしれないが、それはしょうがない。そもそも最初にルディーナ村を助けた時点で、ストーリーなんて分からなくなったし。




 俺は黄色いフレームのメガネをかけて、闇の神殿の裏で待っていた。しばらく待つと、足元の地面に階段が現れる。裏口だ。そしてそこから妖精が出てくる。


 闇の神殿には裏口がある。闇の神殿にはというか、長いダンジョンには結構ある。


 ゲーム的に言えば、すごく長いダンジョンを攻略した後、全く同じ道をたどって帰るのはしんどい。だから行きは大変だけど、帰りはすぐ脱出できるように、スイッチ一つで簡単に外に出られる裏口が高確率で用意されている。


 ゲーム的にはたぶんそういう理由で裏口が用意されているんだと思うが、この世界ではなんで裏口があるんだろうな? 魔物たちの非常時脱出用か? とにかく俺は、妖精さんに頼んで裏口を開けてもらった。


 さて、闇の神殿を攻略しますか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る