37話目、最後の仲間

 大臣は玉座の間に飾られていた水晶のような玉をぶっ壊し、勝ち誇っていたが、しばらくすると怪訝な顔に変わりつぶやく。


「結界が壊れない? どういうことだ?」


 王都には魔物を遠ざける強力な結界がある。そのため王都周辺は魔物が弱い。四天王や大臣は何らかの方法で結界を無効化しているらしいが、それ以外の魔物は王都周辺に来ることはできない。なので王都周辺は動物とあまり変わらないような弱い魔物しか出現しない。


 FQというゲームで、序盤の敵が弱いのはそういう理由があったのだ。


 そして、その大事な結界は追い詰められた大臣が壊してしまう。俺はそれを知っていたので、結界を作り出している結界石を事前にすり替えたのだ。すり替えておいてよかった。結界が壊れると王都に強力な魔物が大量に入り込み、大惨事になるからな。


 大臣が割れた水晶のかけらを見て叫ぶ。


「クソ、偽物だと!? いったい誰がすり替えたというのだ!」

「すり替えられている? だれが、どうやって……?」

「魔王様、申し訳ありません。勇者を殺すこともできず、王都の結界を壊すこともできませんでした。せめて我が命、御身の復活にお役立てください」


 そういうと、大臣は自らの胸に杖を突きさした。胸から血を流し地面に倒れこむ。


 自殺……か?


 何はともあれ俺たちは大臣を倒し、王都を守ることに成功したのだった。




「まさか大臣が魔物だったとは・・・・・・。アークよ、よくぞ見破った」

「僕は何もしていません。見破ったのも、正体を暴くために使った真実の鏡を用意したのもムラトです」


 俺とアークは、がれきを一通り片付けた玉座の間に再び呼ばれた。そこで王が俺たちをねぎらった。


「そうか。ムラトよ、助かった。しかし、結界石が壊されてしまったか。このままでは王都にいつ強力な魔物が攻め込んでくるかわからん。早くなんとかせねば」

「それについててですが、どうやら結界は無事なようです」

「なに? 結界石がこうして粉々に砕けておるではないか!」

「それが……どうも偽物らしく」

「なんと!? では本物はどこに」

「あの……。本物ならここにあります」


 俺は王様とアークの前に、すり替えておいた結界石を見せる。それを見てアークが驚く。


「バカな! いつそれを手にした?」

「それは……」


 俺が答えに窮したとき、王様が割り込んできた。


「おお、これは紛れもなく結界石! よくぞ守った。なにか褒美をやろう、なにがいい?」

「でしたら聖騎士アークを貸していただきたい」

「ほう、なぜじゃ?」

「魔王を倒すためです。そのためには彼の力が必要だ」

「魔王を倒す? 君がか?」

「はい、俺は勇者の仲間の一人ですから」


 俺は王様に、ルディーナ村に住んでいたマールという少女が勇者であること、大臣が魔物であることを見抜き、勇者の旅を妨害されないように今まで黙っていたことなどを説明した。


「そういうことであったか。わかった、アークを貸そう。必ずや魔王を倒してまいれ」

「はっ!」


 こうして俺はアークを仲間にすることに成功したのだった。






「あっ、はっ、うん、はあん、あっ……」

「はあ……」

「どうした? 溜息なんてついて」


 アークはマールに補助魔法をかけながら大きなため息をついた。


「僕は勇者の仲間になれると聞いて、それなりに期待していたんだ。魔王を倒す重大な役目だ、困難もあるだろう。しかし英雄の一人になれるのではないかという期待が僕にはあった。それなのに……」

「なんというかその……ごめん」

「いいんだ、たしかに勇者に補助魔法が使えない状態はまずい、わかっちゃいるんだ」


 アークはせっかく勇者の仲間になったのに、最初にやることがマールを補助魔法に慣れさせる作業でがっかりしたようだった。もっと華麗に魔物を倒したりしたかったんだろうな。


 それにしてもさすがアーク、補助魔法を受けるマールの姿はかなりエロいが、表情一つ変えない。俺とは違って女性に慣れているのだろうか? めっちゃイケメンだし。




 その日の夜。俺たちは王都にあるとある宿屋で休むことにした。部屋は男女で分けた。


 俺も男だ。マールとサキさんはエッチな恰好をしているし、ムラムラすることもある。そういう時はいつも一人で処理をしていた。いつもならマールとサキさんで一部屋、俺が一人部屋だったので問題なかったが、今日はアークも俺と同じ部屋だ。


 さすがにアークと同じ部屋で処理はできない。しかたないので今日は外の誰の目にもつかないところに行くしかないか。そう思いとりあえず部屋をでようとすると、アークが声をかけてくる。


「待て、こんな夜にどこへ行くつもりだ?」

「え、えっと……」

「……花街か?」


 そうか、花街があるのか。FQは全年齢対象のゲームだったからそういう夜の店はなかったが、ここにはあるのか。花街……ちょっと気になる。


「勇者パーティのメンバーが、そういう夜の店に行けば評判が悪くなる。だからそういうのは仲間内で処理しよう」

「うん? 仲間内で?」

「ああ、僕が夜の相手をしよう」

「……ん? はあ!!? 男同士でか!?」

「大きな声をだすな、周りに聞こえるだろう。……安心しろ、僕は女だ」


 そういうと、アークは着ていた服を脱いでいく。今までアークはずっと鎧姿だから気が付かなかったが、服の姿だと確かに女性っぽい体つきだ。そして、服の下からは女性の裸が出てくる。えええ??? アークが女性? うっそだろ。俺はFQを何度もクリアしたが、そんな話は一度も聞いたことがない。


 そういやアークはゲームでも装備できる防具が少なくて、いつも鎧ばかりきていたな。まさかこういうことだったのか?


「僕は男の性には理解があるつもりだ。聖騎士団は男だらけだし、いつもそういう話ばかりしていたからな。僕も初めてだが知識はある。任せろ」


 そういうと、アークは俺をベッドに少し強引に押し倒した。


「僕では興奮しないか?」

「いや……そんなことは……」


 アークは男だと思っていたからイケメンに見えていたが、女性だとわかれば少々きつめの顔だが、かなりの美女に見える。興奮しないと言ったら嘘だろう。


「こういうことはその、好きな人にするべきじゃ……」

「僕は君が命懸けで大臣と戦う姿を見て、好きになった。抱かれてもいいと思える程度には。それじゃだめか?」


 えええ!!! 急展開過ぎる。俺はどうすればいいんだ。


 と、そこで、外からマールの声がする。


「おいムラト、どうした? 騒がしいぞ」

「な、なんでもない」

「何でもないこともないだろう、入るぞ」

「よせ!!」


 ガチャ


『あっ……』

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