20話目、地下遺跡その2
俺は一度、マールたちの様子を見に行くことにした。別れてからもう数週間は経っている。どのくらい強くなっただろうか? とりあえずトルース村へ向かう。
それにしても移動は大変だ、車とか電車とかないからな。乗り物ほしいわ、俊敏高いから走って移動でも十分早く移動できるけど疲れるし。
そういえば、この世界ってよく考えると不思議だな。FQと似ているけど違うところも多い。ゲームだと俊敏の高さで移動が速くなったりしなかったぞ。あと移動で疲れるなんて描写もなかった。
まあゲーム的にはパーティメンバーの俊敏の影響で移動速度が変わりますとか、しばらく移動すると疲れますとかを表現するのは難しいだろうけど。
ステータスも見れないので、本当にレベルがあるのかも実はわからない。一応レベル上げをしながら木の板を割り、割れる枚数が変わったりしないか確認したら、割れる枚数が増えた。なので恐らくレベルかそれに近いルールがこの世界にはあるんだと思うのだが、どうなんだろうな?
この世界はゲームを現実にした世界なのか?
逆か? FQというゲームがこの世界をモチーフに作られていたのか? その方がしっくりくる。
誰かがこの世界を真似てゲームを作った、しかしすべてをゲームに再現できなかったから違うところもあるとか? だとしてもゲームを作った奴は何者だ?
考えたところで本当のところはわからないか。
そんなことを考えているうちに、トルース村のサキさんの家についた。彼女たちは地下遺跡に潜りっぱなしということはないはず。何度もここに戻って休んだはずだ。もし俺が直接地下遺跡に向かった時、彼女たちがここに戻ってきていたらすれ違ってしまうので先に確認に来た。どうやらここには居ないようだな。
一応すれ違わないようにメッセージを残しておく。
さて地下遺跡に向かうか。
地下遺跡の入り口でマールたちが出てくるのを待とうかとも思ったが、いつ出てくるか分からないので俺は地下遺跡を攻略していくことにした。
マップを完全に暗記しているから無駄なく最短距離を進む。メタルゴーレムは足音がでかいので、どこにいるのか簡単に分かる。なので戦闘を避けることができ、素早く進める。
どんどん先へ進み、地下4階層まで来たがまだマールたちとは出会えない。どこまで進んでいるのだろうか? 地下4階層にもなると、出てくる魔物が変わる。灰色のメタルゴーレムではなく、白銀のシルバーゴーレムが出てくるようになる。
メタルゴーレムよりも攻撃力も俊敏も高く強い魔物だが、マールたちはもう倒せるようになっているのだろうか?
さらに地下遺跡を進んでいくがまだマールたちとは出会えない。そしてついに地下7階層まで来てしまった。ここからは出てくる魔物が金色のゴールドゴーレムになる。
ゴールドゴーレムはシルバーゴーレムよりさらに強い。俺でも正面から殴り合うのは厳しい。
もちろん俺は敵の攻撃モーションを完全に理解しているので、攻撃をよけながらちまちま削っていけば倒せるが、マールたちは恐らくそんなことはできないはず。
なのでステータスでごり押ししてるはずだが、このレベルの敵をもう倒せるほど強くなっているというのか?
それともすでにどこかですれ違ったのだろうか? 電話がないというのは不便だ。マールたちはどこにいるんだろう?
ガキンッ! ガキンッ! ガキンッ!
地下9階層まで来た時、激しい金属同士がぶつかる音が聞こえた。おそらく戦闘音だ。
俺は音のする場所へ急ぐ。すると、そこにはマールたちとゴールドゴーレムが相対していた。マールが魔物に切りかかる。激しい金属音と共に魔物の腕が抉れる。
つ、強い。
オーブによるステータスの底上げと、聖剣の攻撃力の高さもあるのだろうが、もう攻撃力は俺より高そうだ。レベルが上がるのが早すぎる。最弱のムラトと最強の勇者ではこれほどレベル上げの効率が違うというのか? それともマールが相当無理して戦っているか。あるいは両方か?
魔物側も反撃する。腕を振り下ろしマールに攻撃する。よけたりせず、それを真正面からマールは受け止める。しかし力負けしているのか、地面に少しずつめり込んでいく。
「くっ」
そこへサキさんが横から蹴りを入れて、魔物をよろめかす。その隙を逃さずマールはゴールドゴーレムの頭を切り裂いた。重量のある魔物が大きな地響きをたてて倒れる。
「なんとか勝てたね」
「ああ、さっきは助かった」
「どういたしまして。そろそろ一旦帰りましょう、もう疲れたでしょ」
「いや、もう少しだけ戦おう」
「まだ戦うの? 無理をするのはよくないよ」
「俺もそう思うぞ」
「うわ!? いつのまに!?」
俺がマールたちに近づいて話しかけると、二人は驚く。
「なにをそんなに焦っている? この短期間で9階層まできているとは驚いたぞ」
「私が弱いせいで誰かを助けられないのは辛いんだ。私も魔王の手下と戦って、みんなを助けたい。ムラトと一緒に戦いたいんだ」
「焦るな、お前が死んだら元も子もない。お前はもう十分強い」
なんだかマールが危うく感じる。無理してどこかで死んだり怪我をしてしまいそうだ。一緒に行動して様子を見守った方がいいかもしれない。
レベル差も相当縮まっただろうし、経験値が俺に集まる問題も大分解消したはずだしな。
「わかった、じゃあ帰ろうか」
「いや、せっかくだからあと少しだけ進もう」
「何故?」
「次の階がこの地下遺跡の最後だからな、せっかくだからクリアしてしまおう。この3人でならいけるはずだ」
俺たち3人は地下遺跡の最奥に向かった。
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