18話目、聖騎士アーク
ダークナイトとギルガメッシュの奥義がぶつかる。黒い闇と白い閃光がぶつかり、それぞれのエネルギーが爆発する。地面に大きな穴が開き、そして砂煙が立ち上る。砂煙で良く見えないが、一人の男が立っているシルエットが見えてくる。
砂煙が晴れていく。立っていたのは、ギルガメッシュの方だった。
勝った……のか?
「何故神ノ一閃を知っている?」
「それは……」
「いや、いい」
ギルガメッシュはどこかへ向かって歩いていく。
「あの! どこへ行くんですか?」
「しばらく姿を隠す。その方がいいのだろう?」
「どこへ?」
「師匠の元だ、もう一度修行を付けてもらう。今のままでは魔王に敵いそうにない」
彼はふと足を止めた。
「そうだ、キサマの名は?」
「ムラトです」
「ムラトか、覚えたぞ」
彼は今度こそ去っていった。
それにしても、まさかこれほど序盤でダークナイトと闘うことになるとは。危なかった、ギルガメッシュが一緒じゃなければ勝つことは不可能だっただろう。終盤のボスはまだ他にもいる。もしまた出会ってしまったら危険だ。一旦俺自身のレベル上げをするか……?
しかし、俺はすでにそこそこレベルがある。ここからさらに上げるとなると、どれほど時間がかかるか……。それに、上げたところでムラトだからな。たいして強くはなれないだろう。
もう出会わないことを祈って、割り切って先に進むしかないか。
俺は先に進むことにした。ギルガメッシュはすべての街を助けたわけではない。残っている魔王の手下たちを倒さなければ。
俺は戦死した者たちを弔う町、シヨンタウンに来ていた。半分がお墓と教会の町だ。この町に死者を蘇らせて手下を増やしているネクロマンサーがいるはずだ、それを倒しに来た。
まずは聖騎士アークを探そう。
というのもネクロマンサーは聖魔法がないと倒すのが難しくなる。別にアークじゃなくても聖魔法の使い手なら誰でもいいんだが、アークが聖魔法の使い手で一番強い。楽に倒そうと思ったらアーク一択だ。おそらくこの町にいるはずだしな。
アーク。
最年少で聖騎士になった、銀髪で中性的な顔のイケメンだ。
いるとすれば教会だろうか。この街には教会が多いから探すのは大変だが……。
街を歩き回り、いくつもの教会を訪ねる。
「すみません、こちらに聖騎士のアークさんはいらっしゃいますか?」
俺は古びた教会を訪ねた。壁にかけられている十字架も欠けていてぼろぼろだ。その中から初老の神父が現れる。
「いいえ、来ておりません」
「そうですか、どこにいらっしゃるかご存知ありませんか?」
「すみません、何分最近こちらに赴任してきたばかりでして。あまりこの町の事を知らないのです。お力になれず申し訳ない」
「いえ、わかりました」
ここでもない、か。いったいどこにいるのか。
教会を出て町を歩いていると、遠くに銀髪の男の姿が目に入る。白銀の鎧を身に着けたイケメンだ。こちらの姿を見ると、速足で近づいてきた。
「君だね?」
アークが突然話しかけてきた。少しイメージとは違う声だ。思ったより少し高く、中性的な声だと思った。
「あの、何が?」
「とぼけなくてもいい。最近死者が歩いているという目撃情報が相次ぎ、さらに死体が消えている。誰かが死者を弄んでいるようだ。その犯人を捜すように僕は命じられている、犯人は君だね?」
「違います」
「まあいい。とりあえず君を牢屋にぶち込み、それで目撃情報が無くなれば君が犯人で確定だ」
そういうと、アークは力強く俺の手首をつかむ。え、こんな展開ゲームではなかったぞ、どういうこと!?
「待ってください! なぜ俺が犯人だと? 証拠はあるんですか!?」
「死者が町を歩く姿が目撃されるようになったのは最近だ。つまり元々この町にいた住人ではなく、最近この町に来た人物が怪しい。もちろん元からいた住人が突如ネクロマンサーになった可能性もあるが、その可能性は低いだろう」
「え? それでなぜ俺が犯人だと?」
「君はこの町の住人ではないだろう? それに見るからに怪しい。とりあえず牢屋にぶち込んでおこうと思ってな」
「そんな、むちゃくちゃだ」
「なに、犯人でないならすぐに開放しよう。賠償金も支払う、それでいいな?」
俺は力ずくで引きずられる。まずい、捕まってしまう。
「待ってください! 実は俺もその件については調査しています」
「ほう、なぜだ?」
「え……? 死者を弄んでいるのが許せないから……?」
「ふーん?」
うわ、アークがめちゃめちゃ怪しんでいる目をしている。
「とにかく実は俺も調査してまして、その件に関わる重要な人物を突き止めています。俺を捕まえるのはそいつを調査してからにしませんか?」
「情報の内容しだいでは考えてやらなくもない。で、その重要な人物とは誰だ?」
「……町長です」
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