やりこみゲームの最弱村人、世界を救う
セラ
1話目、プロローグ
世界は闇に覆われた
海は凍り木々は枯れる
その世界では、あらゆる生物が生きることを許されない
凍てついた死の世界、それがこのゲームの始まりだった
鈍い頭の痛みを感じながら、俺は目を覚ました。枕元にあるはずのスマホを探す。
見つからず、しぶしぶ起き上がる。
ここはどこだ?
起き上がり周りを見渡すと、ここが自分の家ではないことに気が付いた。テレビも本棚もないからだ。代わりに古い木造の壁が目に付く。俺はなぜこんなところにいるのか、それを考えるために昨日のことを思い出す。
確か昨日は、一日中家から出ずにFQというゲームをやっていたはずだ。昨日というか、俺は休みの間ずっとゲームをしていた。何時間ぶっ続けでやっていたのか、自分でもわからない。そのあと何とかセーブだけして、そのままいつの間にか眠ってしまったのではないかと思うのだが、違うのか?
ひたすら寝ずに何時間もゲームをしていたから、俺は頭がおかしくなってしまったのだろうか? こんなところで寝た記憶はないんだが。
寝ぼけてこんなところに入ってしまったのか?
それとも誰かに連れ去られた? なんのためだ?
記憶があいまいなまま俺は布団から抜け出し、そっと部屋をでる。部屋の外には居間のような場所があり、真ん中には囲炉裏がある。まるで古民家のような家だなと思った。そして、俺はここを見たことがある気がする。
俺はここを知っている……?
どうやらいきなり知らない場所に放り込まれたわけではなさそうだが、思い出せない限りはここがどこだか分からないままだ。
思い出すためのヒントを求めて、俺は家から出ることにした。
玄関に俺の靴はないようなので、仕方なく草履を拝借する。
そうして外へ出た瞬間、ここがどこなのかすべてわかってしまった。
100回以上見たことのある、川のそばにある小さな村を見下ろす景色だ。俺はもうこの村のどこに何があるのかすべて把握している。そして……自分の家に帰ることができないことも同時に理解した。
それが正しい事であることを証明するかのように、一人の少女が近づいてきた。
黒髪の美しい少女だ。手には水の入った桶を持っている。
「目が覚めたのね、よかった。あなた、森で倒れていたのよ」
凛として優し気な声だ。ゲームではボイスがついてなかったからイメージとは少々違ったが、これはこれで彼女に似合っている。
少し幼く見えるが間違いない、彼女こそFQで人気キャラの一人、拳闘士のサキだ。つまりここは……。
考え込んでいる俺に、サキが桶を手渡してきた。
「ぼーっとしているけど大丈夫? 顔でも洗ったら?」
渡された桶をのぞき込むと、水面にうっすらとFQの最弱キャラが映っていた。
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