Tearの記録

 『December』


 十一月にあったことを私が記録するよ。書こうとすると泣けてきちゃうけど、書かないと私たちのことを守ってくれた先生の記憶を残せないから頑張るね。  

  

・規則の改変

 ウィッチ先生の計らいで"殺し合い週間"が"殺し合い時間タイム"に変わって、期間が一週間から二十四時間に変わった。それに殺し合いするための範囲が本校舎だけじゃなくて、校舎外のグラウンドも範囲になったよ。今思えば、ウィッチ先生は私たちを本当に生かそうとしてくれたんだね。 



・ウィッチ先生について。

 Zクラスの担任で、いつもだるそうにしてた。

 でもその正体はレーヴダウンの元四色の蓮に所属していた凄い人で、私たちのことを大切に想ってくれていた優しい人だったんだ。幼少期に離れ離れになったリベロのお母さんだったってね。リベロのことを心配して、このエデンの園にやってきたんだと思う。


 第一キャパシティは一触即発インスタントタッチ。一度触れたものを自由自在に爆発させることが出来るんだって。Sクラスの生徒を倒すことは出来なかったけど、殺し合い時間が終わるまで私たちのことをずっと守ってくれていたよ。それなのに…どうして――(紙がふやけてこの先の文字が読めない) 



・Sクラスのスロースとストリア。

 あの二人がウィッチ先生を殺し合い時間が終わっているのに殺した。規則違反のはずなのにそれを破れる能力を持っていて、それが確か

 スロース→反規則アンチルール

 ストリア→反逆者トレイタ―

 っていう能力だった。この能力を持っているから、規則に囚われることなく自由に行動が出来る。そんなのずるいよ。おかしい。規則が効かないんじゃ、ウィッチ先生が規則を変えた意味がないよ。



・これからについて

 赤の果実は解散だってノアは言ってたけど、本当にどうなるんだろ。私たちだけじゃSクラスには敵わないし、このままだらだらと過ごしていても何も変わらないよね。今はとにかく私がみんなを元気づけて、この嫌な雰囲気を取り払わなきゃ。多分、私にできることはそれぐらいだから。



 17ZM007 Bright



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 『November』

 十一月の記録担当は私が書き記します。

 この月に得た情報量は多く、良くも悪くも衝撃を受けるばかりの話を聞きすぎました。私の記憶している限りの真実をここにまとめさせていただきます。



・真のユメノ世界

 DDOが起こる前、植物状態となる症状を"ユメ人"と名付けていたようですね。そのユメ人が訪れる世界が"ユメノ世界"という場所で、自分自身の理想の世界を好きに描けるだとか。今ではDDOの影響で現実世界へとユメノ世界が現れてしまいましたが、本来であればユメノ世界というのは夢の中にしか存在しなかったみたいです。



・ノアとルナ

 正直、この真実が私の中では最も驚きました。

 初代救世主の生まれ変わりがノア、そして初代教皇の生まれ変わりがルナ。よく考えてもみれば、ノアとルナほど強い生徒がZクラスに所属していること自体おかしかったです。記憶喪失という話もいまいち信用が出来ませんでした。戦争を引き起こしていた初代の二人が何千年後になってその戦争を止めようとしている。なんて残酷な話でしょうか。

 


・雨氷雫

 彼女はどうやら初代救世主の頃のノアの恋人のようですね。性格と容姿がレインとやや似ています。二丁拳銃を扱うことから、ノアとの共通点もありますね。DDOが引き起こされるきっかけとなった元凶だと資料には書かれていましたが、一体どのような"物語"があったのか。それを一度聞きたいものです。 

 


・月影村正

 彼は初代教皇の頃のルナの義理の弟のようですね。性格と容姿がリベロとやや似ています。二刀流を扱っていますが、その腕前はなかなかです。ノアの衝撃操作ショックオペレーションという能力と同じものを持っているようです。



Noel Projectノエル プロジェクト

 初代救世主と初代教皇が戦争をしていた時代。

 白金昴という研究者が、兵器開発の裏で密かに進めていた計画です。『現ノ世界を象徴する救世主、ユメノ世界を象徴する教皇。二つの世界を一人で支配できるような存在を創り出す』

 上記の目的で何千年経った今でも計画を進めているようですね。


 話によれば不老長寿ロングライフという能力を白金昴は所持しているだとか。この能力は所持した瞬間からその姿以上に老いることなく、死ぬまで生き続けることが出来ます。ですが一度でも能力を身体に付与させてしまえば、二度と老いて死ねなくなるらしいですね。

 自分たちしか持っていない能力だとノアとルナが言っていましたが、実際に白金昴はそれを所持して今も"ゼルチュ"として生き長らえている。

 

 Sクラスの七元徳と七つの大罪は何千年も前に死んで、ゼルチュ、もとい白金昴が"クローン技術"を使用し新たに生み出したようです。



Drop Projectドロップ プロジェクト

 雨氷雫と月影村正。この二人の研究者がノエルプロジェクトを阻止するために立てていた計画です。遺伝子を用いていて複製をしていましたが、白金昴と大きく違うのはそのレプリカたちに"人間らしさ"と"ユメ"を与えたこと。

 私たちが二人から聞かされたのは、そのレプリカが私たちの両親だったという話。そして私たちはこのエデンの園に来る前、Drop Projectに勘付いた白金昴によって、何度も戦争の現場に巻き込まれていた。

 

 私の弟がノアに似ていたのも、ウィザードの妹がルナに似ていたのも、すべては雨氷雫と月影村正の二人がその遺伝子を組み込んだからだったのですね。納得しましたよ。 


 このエデンの園へ私たちが呼ばれたのも、白金昴…ゼルチュが仕組んだことで、Drop Projectのクローンをすべて始末するため。そして自分の創り上げたクローンと、雨氷雫と月影村正が創り上げたレプリカを戦わせるためだったのです。こんなお遊びのために命を懸けていたと思うと、怒りが込み上げてきます。  



・これからについて

 私たちが生き残る理由、私たちが戦う理由。それをすべて知ってしまった。ゼルチュの企みを阻止するために生まれた存在なら、私はその使命を全うしましょう。


 ――両親と弟を殺したアイツを、殺せるのなら。



 17ZM017 Tear

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