嵐の夜に
深夜、柊里は喉の渇きを覚え目を覚ました。
突然カーテン越しに窓が光り少し驚く。
「ん?あ、台風か」
キッチンへ行こうと廊下を通ると、竜とソウがリビングで、明かりもつけずに座り込んでいるのに気付く。
「はいはい、怖くないよー」
声をかけようと近付く柊里の耳に入ったのは、ナオのか細い鳴き声と、竜の優しげな声だった。
「あれ、ひまも起きちゃった?」
柊里に気付いた竜につられて、ソウも顔を上げる。竜の胸にはナオが抱かれていた。
「雷の音で起きちゃってねぇ。ニーニー鳴くもんだからあやしてたんだよ」
竜の「ひまも起きちゃった?」は、ナオのように雷鳴で起きたのかとどうやら勘違いしたらしい。
「ううん。あたしは喉が渇いて」
そう言いながらナオを覗き込んだ柊里は自然と竜とソウの顔も目に入り、思わず息を止めた。
眠っていたナオが目を開き思い出したように竜の胸元にすがり付くと、竜とソウは困ったように、楽しそうに笑って、撫でて返事をする。
(暖かい)
それは、今まで柊里が届かないと諦めてきた、見ないようにしてきたものだった。
血は繋がっていない。父親も母親も、ここにはいない。
それでも家族なのだ。
竜は、まだ腕の中でぴちぴちと暴れるナオを苦笑いしながら見せてくる。
柊里が人差し指で小さなお腹を撫でると、ナオは短い手足で指をガシッと抱きしめ、また眠ってしまった。
竜とソウが声を押し殺して笑う。
「もー、ほどけないじゃん」と小さく呟きながらも、その指先は今まで触れた何よりも暖かかった。
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