【滑舌】

あさくらさん、ごめんなさい!」

「もういいわよ……。似顔絵で殴ったのは私が悪いわけだし……それはそれは、グレ●リンみたいな顔だったわよねぇ~?」

「いや、朝倉さん……それは、違くてね?」


(た、確かに、あの時のぎようそうはマジもんのグレ●リンみたいだったけど……しかし、このまま朝倉さんの機嫌が直らないと、俺が学校中の男子に殺されかねない!)


「そうだ! 確か朝倉さんってラノベよく読んでいるよね?」

「うぇえ! あんどうくん……き、気付いてたの?」

「うん、実は休み時間にスマホで『な●う』の小説を読んでるのを見かけて……ゴメン」

「う、ううん! 全然いいのよ! そ、それで?」

「えっと、朝倉さんがよければなんだけど、今回のおびとして……今日の放課後、何か好きなラノベをプレゼントさせてもらえないかな?」

「ふぇ……?」

「や、やっぱりダメだよね! 俺みたいなやつが朝倉さんの貴重な時間をもらうなんて──」


(やばい、俺ってば『ぼっち』の癖に、何ナンパみたいなことしてんだよ! こんなのお詫びって称して、ただデートに誘っているみたいじゃないか! よし、さっさと謝って。お詫びに財布の中身を全部渡して、この件は手打ちにしてもらおう……)

(デートのお誘い……キタァ──ッ!? ここ、これって、デートよね!?)


「そ、そないなこと……ないにゃ! ひょ、ひょろこんで!」


(──って、こんなタイミングで何でんじゃうのよぉおおおおおお!)


「こ、コホン……よ、にょろこんで!」

「あ、はい……」


(朝倉さんって、しょっちゅう噛むよな……滑舌悪いのかな?)

(だから、何で噛んじゃうのよぉおおおおおお!)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る