何故か学校一の美少女が休み時間の度に、ぼっちの俺に話しかけてくるんだが?

出井 愛/MF文庫J編集部

第一章

【タイトル】

(次こそはあんどうくんと会話してみせるわ! そのためには私から話しかけるべきよね!? 大丈夫、私ならできるわ! 話しかける練習だって、家でバッチリしてきたんだから!)

(……なんだろう? あさくらさんがこっちを見てる気がする……。もしかして、朝倉さんは教室でラノベ読む人を毛嫌いするタイプか?)


「ねぇ、安藤くん」

「は、はい!」


(うぉ、話しかけて来たぞ! 美少女がぼっちの俺に話しかけるとは何事だ? ……しかし、焦るな……これはきっと──、

『クラスのぼっちにも声をかける私って本当に優しいわ!』

 という印象をみんなに与えるための演技に違いない! でなければ学校一の美少女が、ぼっちの俺に話しかけてくるわけがない……。だから、落ち着いて対応すれば大丈夫だ)


「あ、あんどうくんって……いつも何を読んでいるのかしら?」

「…………は?」

「へ?」


(やったぁああああ! ついに話しかけれ──って、うぇぇええぇえええええええええええええええ! 返事それだけ! 『は?』って、何よ!? さ、最初に話しかけてもらった言葉が『は?』って……そんなのあんまりでしょぉおおおおおおおおおおお!)

(やべぇ……クラスで話しかけられるなんて、数ヶ月ぶりのアクシデントだから、く声が出せなくて『はい?』って聞こうとしたら『は?』って答えちゃったよ……。学校一の美少女に、ぼっちの俺が『は?』って返事するとかマズすぎだろ!)


((き、気まずい……))


(い、今のは『学校一の美少女』の私に話しかけられて焦っちゃったのよね……? じゃないと作品名を聞いて『あ、それ私も読んだことあるわ!』からのラノベ仲間アピールができないじゃない!)

(これは作品名を答えていいのか……あれ? もし答えるとしても、俺はこのタイトルをあさくらさんに言うのか? ちょっと、このタイトルは口にするのに勇気がいるなぁ……)


「……て」

「っ!?」


(キタキタキターッ! 『て』? 『て』ってことは始まりは『てんせい~』よね? よし! 『な●う』の転生モノなら私結構な量を読んでいるから何でも来いよ! 『スライム』? 『剣』? それとも『貴族』かしら? ウフフ……さぁ、何でも来なさい!)


「『転生したら悪役令嬢だった件』」

「…………」


(まさかの『悪役令嬢モノ』ぉおおおおおおおおお!? しかも、私読んでないわよ!

 え……安藤くんって『悪役令嬢モノ』も読むの? ま、まって! 私の専門は『異世界転生俺TUEEE』だけで『悪役令嬢』は勉強不足なのよ……)


「あ、あぅ~、えっと──」

「なんか……ゴメン」


(はい、ほらミスったぁああああああああああああああああああああ! これ盛大に自爆してんじゃん! 空気死んだよね!? あさくらさんの顔見てよ! 何か盛大に『まったく想像してないタイトルが来ちゃった……』みたいな顔してるからね!?

 ああ、分かってたよ。朝倉さんが『な●う』の作品に詳しくないってね! でも、この前『はちなんてんせい』読んでたから、もしかしたらいけるかも……? って、思ったんだよ!

 はい、決めた! 俺もう朝倉さんの前で『ラノベ』の話はしないもんね!)


((このままだと空気が重すぎる……何か話さないと!))


「「あ、あの──」」


 キーンコーンカーンコ~~~~~~ン♪


((お、終わった…………))

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