Ⅳ 『黒葬』内部抗争編
Prologue
この日『黒葬』では、重要な会議が行われていた。
会議室には30人弱の要人が集まっている。
執行部の課長が3人、指令本部長はもちろん、部長クラスは全員出席を強制された。外部の者も数人いる。彼らは政府関係者や公安辺りの人間だ。
「――先日、最期の『お導き』を残し社長が息を引き取りました」
進行は指令部長、獅子沢晴音が務めている。
「今まで、『黒葬』は社長の『お導き』を指標とし、活動を行ってきました」
獅子沢は続ける。
「その道しるべを失くした『黒葬』の歩調が乱れるのは時間の問題かと思われます。ゆえに、今必要なのは、組織として統率力の強化です」
『黒葬』の組織改革である。
「新たな社長を決めるという案もでました。しかし、『黒葬』という強力な組織の権力を軽率な考えで一人に集中させるのは危険でしょう。……実際、星鳥院社長は『お導き』以外で社の方針を定めたことはほとんどありませんでした」
『黒葬』社長、星鳥院は前組織『黒の
『黒葬』は、法に縛られない。善意による使命に従い超常の力を使うという不安定な組織ということに変わりない。一歩足を踏み外せば、世界を脅かす組織になりえてしまう。
社長を軽々しく決めるのは危険である。しかし、『お導き』をなくしたまま従来の運営を行うのにも不安が残る。
その結果、代案があがった。
「故に、妥協策ではありますが、『黒葬』の最も基盤である執行部に、『執行部長』の役職を設立するというのは以下がでしょうか?」
執行部内の統率力をあげることに重点を置く案だ。そもそも執行部三課長はこの会議に参加していることからもわかるように、実質部長クラスの権限を持っている。故に、執行部の権力が強くなるわけでもない。これは、現状維持と組織改革の中間策だ。
この獅子沢もとい指令部の立案に対し、
「社長を決めるのは、難しいだろうし良い落としどころじゃないか?」
「その部長は、3課長の誰かがやるんだろう? 彼らへの信頼は厚い。異論はないね」
「賛成だが、まとめ役の前に執行部の人手不足解消も考えたほうが良いと思うがねぇ、人事部?」
「今、それは関係ないでしょう……」
様々な意見が飛び交うが、基本的には賛成意見ばかりだ。玄間達は、それを黙って聞いていた。先に話は通してある。
と、そんな時、
「ちなみに、どうやって部長を決める?」
という質問がでた。
「そうですね。部長以上の役職者投票制、執行部員の投票制、全社員の投票制、三課長間での立候補制……。このあたりが妥当でしょうか」
獅子沢がそう答える。
「全社員……。あまりに規模が大きすぎるな。『黒子』まで含めたら相当だぞ」
「うーむ。執行部員限定とすると課員の多い現象課長が有利なんじゃないですか?」
「かといって、我々が決めるのもどうなんだ? 執行部の業務に大きく関わることだろう。現場の意見は尊重したい」
「三課長立候補もなぁ。ハイド君は譲るに決まっている」
「腕っぷしってのは?」
「あほか。それじゃ、玄間一択だろう」
これに関しては割れた。
「……では、こちらに関しては持ち越しということで」
獅子沢はそう言い、この議題に幕を閉じた。
「最後に、社長の残した『お導き』についてです」
この言葉に出席者たちの顔が曇る。
「ご存じの通り、社長は意識を失う直前にこの言葉を残しました」
今回の『お導き』にはある問題があった。
「そのため、この『お導き』は恐らく欠落している」
恐らく、途中で力尽き言葉がでなかったのだろう。
獅子沢は、確認のためその場で『お導き』を読み上げた。
『目覚めた新星は、全てを変える引き金になりえる。収束を呼び、混沌をも呼びこむ。故に黒の組織は、火急を以て星の輝きを――』
『お導き』の意味を完全には理解しかね、皆が不吉さを感じるなか、この会場で
――「目覚めた新星」は坂巻燈太だ。彼は目覚めた。『
玄間は燈太の目覚めた能力、『
――『星の輝きを』……、か。
そのあとに続く言葉は、誰にもわからない。
――もし、『
脳裏に浮かぶ、ある強硬策。
――その前に、俺が坂巻燈太を『処理』する。
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