第63話 突入!『アトランティス』(1)
『こちら指令部長、獅子沢。これより作戦を再開する』
作戦再開である。
アトランティス第一突入班。班員は紅蓮、ハイド、幽嶋からなる。
紅蓮は、この中では二番目の突入となる。
『こちら、第一突入班担当葛城。突入を再開します! ハイドは穴から下降し、アトランティス内の酸素濃度及び、有害物質の有無を調査。問題があれば、赤。問題なければ青の信号弾をお願いします』
この調査で『青』が上がれば、紅蓮が行くことになる。
『了解しました!』
ハイドはそう返答すると、アトランティスへ向かい、穴に向かって飛び降りた。
「何mあるんですかね……?」
「1000m近いでショウねぇ……」
ハイドがパラシュートを開いたのが確認できる。
「不安デス?」
幽嶋は紅蓮を見ながらニヤついていた。
「そんなあからさまに煽んないでくださいよ……。まぁ、不安っちゃあ不安ですかね。何があるかわかんないっすから」
「あなたは不死身でショウ?」
「
「なるほど。それは違いないデス。私も腕っぷしには自信ないデスからねぇ」
幽嶋はそう言い、手をひらひらとさせた。
「テキトーな……」
「あぁ、そうだ。護衛と言えば、燈太クンがいるでショウ?」
「いますね」
「彼からはあまり目を離さない方が良い」
「? というと」
「うちにシールっているでショウ?」
シール。生物課が飼っているでかい狼の名である。今回の任務にも同行している。確かネロという少女が乗っていたはず。
「一回、燈太クンにシールをけしかけたことがあるんデス」
「えぇ……。生物課はどういう研修してんすか……?」
「ともかく。その時、彼は身構える素振りを一切取らなかった」
「……パニくってただけじゃ?」
「えぇ。そういうのなら納得なんデスけど。彼がとった行動は冷静に観察することデス」
「観察……」
「ちなみに、彼はあのとき一応銃を携帯していたはずなんデスけど、一瞬たりともそっちに目がいかなかった。流石に場所が場所ですし、目の前に職員がいた以上引き抜くまではいかないでしょうけど」
対人課として、銃といった護身武器を隠し持った人間と相対すことは多々ある。その時、紅蓮は一瞬たりとも目は離さない。
大抵、泳いだ目の先、身体の動きでどこに武器を隠しているかがわかる。いわゆる、シンソーシンリというやつだ。意識せずともそういう仕草は現れる。
「これは長所であり、短所でもありマス」
「まぁ、対人課の研修でも土壇場で頭が働くタイプなのは感じましたね。誘拐されたときとか」
「えぇ……。対人課はどういう研修をしてるんデスか……?」
そういえば、調は燈太に対しこんな評価をしていた。「未知に触れた時それを受け止めるゆとりがある」と。
「ともかくですね、燈太クンは防衛本能より先に好奇心が出る節があります。意識はしてないでショウけど」
「ようするに危なっかしい……と」
「そうデス。『黒葬』の仕事を考えると非常に優秀なメンタルですが、それゆえに危ない。運が悪いと命を落とす」
「……気に留めときます」
「とはいえ、運が悪ければデス。運が良ければ――」
そのとき、青の信号弾が打ちあがった。
『内部の安全は確認された。次は、紅蓮よ。気を付けて、降下して頂戴』
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