第41話 共鳴
南極大陸中央部。気温マイナス40度。
そこに集まった、8人の『黒葬』社員。日本ではスーツを着ているが、ここは南極であるため分厚い生地の防寒着を着ている。そして、皆大きなリュックを背負っていた。
「さて、ここからは油断禁物デス。準備は良いですか?」
生物課長、幽嶋はそう言った。
全員が頷く。
『作戦通りに行くわよ。第一突入班は葛城が担当します』
紅蓮の耳につけられたイヤホンから葛城の声が聴こえた。
「おうよ!」「了解デス」『かしこまりました』
第一突入班、紅蓮、幽嶋、ハイド、だ。
『ハイド。まずは、穴をあけてもらえるかしら』
『このハイドに、お任せくださいませ!』
ハイドはキャタピラを動かし、移動した。
半径5mほどの円形で氷が薄くなっている。そのため、氷が透けて『アトランティス』が見えていた。
『みなさん、一度離れてください』
ハイドは合成音声ソフトで話す。市場に出回るものより高性能なのか、驚くほどに流暢である。
ハイドの身体から何か細い管のようなものがでた。
『では、開けますよー』
ハイドは、その先端からレーザーを放った。
そうして、ハイドが入れるような穴をくりぬいた。『アトランティス』への入り口ができる。
『まずはハイドに先行してもらいます。そこで人間に害がない環境かを確かめ、続いて紅蓮、幽嶋さん突入をお願いします』
「了解」「了解デス」
『では突入します――』
ハイドはいきなり動きを止めた。
「どうしたんデス?」
『UEを観測……。膨大なUEを観測しましたっ!』
「?!」
その言葉に全員は身構えた。
葛城曰く、『UE』が『アトランティス』から発生したのは『アトランティス』が出現したときのみ。
「一度ここから離れろッ!」
静馬がそう叫んだ。
紅蓮は振り返る。紅蓮がすべきは自分の身を守ることではない。非戦闘員を守らねばならない。そして、燈太の顔が目に入った。
彼は、全く慌てるそぶりを見せていなかった。
『違います! 発生元は彼! 坂巻燈太です!』
ハイドはそう言った。
「なっ……! 燈太! 大丈夫か!!!」
「……多分、大丈夫です」
見たところ燈太に変化はなかった。
「……わかるんです。これ『共鳴』してます、多分!」
「!」
『UE』とは、解明できないエネルギーの総称である。
空の能力で出る『UE』は加速、春奈のだす『UE』は衝撃波を発生させる。『UE』と一括りにするものの全く別のものだ。
もちろん、同種の『UE』も存在する。
同種の『UE』は『共鳴』という現象を互いに起こすことがある。
つまり――。
「この『アトランティス』に燈太が発生させた『UE』の手がかりがある……ということか」
「……ハイドさん。『アトランティス』から『UE』は発生していマスか?」
幽嶋は考える素振りをした後、ハイドにそう尋ねた。
『? いえ、確認できませんが』
「……静馬クン、もし『共鳴』ならば『アトランティス』側から『UE』が出ているはずでは?」
「……
『このハイドも完璧ではありません。その可能性は大いにあります』
「燈太。貴様はどうだ。自分の身体に異常はないか?」
「えぇ、特に異常はないです」
「……きょ、『共鳴』って本当にあるんですね……」
藤乃がそうつぶやいた。
「キョーメイ……?」
「『UE』が友達をみつけて『わーい』って喜んでるってことッスよ!」
「トモダチ! 良いコト!」
「恵、どうする」
紅蓮はマイク越しに葛城へ話かけた。そういえば葛城の声が聴こえない。
『――』
「……葛城?」
おかしい。
「今ので壊れちまったのか……? 幽嶋さん、マイクとイヤホン使えます?」
「ん? ……アレ、こっちもダメみたいデスね」
『待ってください! 「黒葬」本社と連絡が付きません!』
「は?!」
「今の燈太の影響ではないのか?」
『いえ、このハイドに異常が起きていないため電子機器系統は無事です。電波に関しても問題ありません! つまり、本社の方で何かあった可能性が……!』
「なんだ……と」
「次から次へとなんだってんだ……!」
「……ハイドさん、静馬クン。ここは任せて良いですか? 私は
幽嶋はそう言い、姿が消えた。
「めぐ姉もカレンちゃんも大丈夫ッスかね……」
皆が『黒葬』の事、『UE』の事で動揺する中、燈太のみが別のことを考えていた。
『共鳴』した時、はっきりとそれを認識できた。
自分と同じ何か、同種の『UE』を感じたのだ。
――しかし、何かがしゃくぜんとしない。
その『UE』は自分の能力と深く関りがあるが、何かが
春日部は自分の能力は環境の把握だけでない可能性があると言っていた。
やはり何かある。
「知らなくちゃ……」
『アトランティス』を調査し、探すのだ。
自分の能力と『UE』の手がかりを。
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