第2話

小田と真鍋は洋館の大きな門の前に立っていた。

真鍋は洋館を見上げ、興奮したように口を開いた。


「うわぁ、大っきいですねぇ!!」


真鍋の瞳が輝いている。

小田はそんな真鍋を無視して、門の横にあるインターフォンを鳴らした。


インターフォン越しに、丁寧な口調をした男性の声が聞こえてくる。


『はい、どちら様でございますか』


小田は、何やら気まずそうに頬を掻いた後、


「あー、と。昨日の夜に電話した者だが……」


その様子をインターフォンのカメラで確認していた男性は、微笑を浮かべた。


『小田泰造様と真鍋幸子様でございますね。お待ちしておりました』


ギィと音がして、洋館の門がゆっくりと開かれる。


『どうぞ、お入りください』


2人は門をくぐり、洋館の敷地へと足を踏み入れた。

しばらく歩くと、洋館の玄関扉の前に辿り着いた。


すると、今度は音もなくその扉が開いた。

そこにいたのは燕尾服を着た執事の男であった。


彼はインターフォン越しの声と口調で、丁寧な礼を見せた。


「ようこそ、西園寺家へ。応接室へご案内させていただきます」


小田と真鍋は、執事の後ろを付いて歩く。


玄関ホールの掃除は隅まできちんと行き届いていた。

しかし、ホールから応接室へ行くまでの廊下を見て、小田は眉をしかめる。


廊下に物が散乱している。

それだけではなく、泥の足跡がそこら中に付けられていた。


「これって……」


洋館の異常に気付いた真鍋は、上司である小田に視線を投げかける。

小田は何も言わず、頷く。


まるで誰か泥棒にも入られたみたいだな。

そのように推測を立てると、彼はくっと意地の悪い笑みを浮かべる。


その表情に真鍋は驚いた。

小田さんが笑っているなんて……なんか怖い……。


執事の男は、小田と真鍋の様子に目線をやるも、何も言わずまた何も感じさせず、黙々と汚れた廊下を歩いた。

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