第61話

 帰って来て直ぐに着替え、ちょっと昼寝。

 ルチルもアデラも、眠そうな中私を待っていてくれた様で、一緒に睡眠。

 目覚めてから、空間収納に入っている材料を確認し、整理。



 取りあえず、出汁類を作ったり、下ごしらえをして、常備菜やお菓子を作ってしまおうと、エプロンを装備し早速没頭。



 助かるのは、コンロが二口から四つ口になっていた事だろうか。

 どうやら侍女達が私の外出中に代えてくれたらしく、素直に感謝を伝え、コンロをフル活用。





 下ごしらえが終わり、さて調理しようかと思っていたところに、通信機が鳴り、相手はリーナで、直ぐに出る。


「どうしたの、リーナ?」


 私が問いかけつつ見ると、心配そうな顔のリーナが映し出される。


「あれ? ベッドで寝ていなくて大丈夫? 昨日話し過ぎちゃったから、具合悪くなった?」


「大丈夫よ。今日はフリードと外出してきた位だから、元気。帰って来てから昼寝もしたし。ちょっとルーとフリードの昼食を作ることになったから、その材料を買って来て、今調理している所」


 リーナは目を丸くしつつ、心配げに


「え!? 大丈夫なの、本当に?」


 それに笑って答える。


「平気、平気。大丈夫よ。本当だからね。私の気持ちの持ち様が大きいらしいから、フリードとの外出も凄く楽しかったし、調理しているのも好きだから、むしろ元気なくらい」


 リーナはまだ心配らしく、眉根を寄せたまま


「なら良いけれど……それで、ルディアス殿下とフリードリヒ殿下の昼食、作る事になったって、大変じゃない?」


「料理は前世から好きだし、得意だから問題無し、だからね。それに色々悪い方に考えやすくなるから、料理しているのは逆に楽だし、考えも料理の事を考えるから、むしろ私にとっては良い事だから心配しないで」


 私が微笑んで答えると、ちょっとホッとした様な顔になるリーナ。


「分かったわ。気を回し過ぎてごめんね。あの、ね。それで、ちょっと話したい事があったんだけど、今日は無理かな?」


 リーナに問われ、考える。


「そうね……ちょっと難しいかもしれない。あ、でも、夕食後なら大丈夫だと思う」


「夕食後でも良いわ。ありがとう。時間を取ってくれて。あれ? もしかして、夕食は一緒に摂れない感じ?」


 リーナの言葉に、後ろで控えている侍女達を見ると、彼女達は一斉に首を振る。


「ごめんなさい。まだ無理みたい。部屋で摂る事になるわ。皆の顔が見たくて恋しいけれど……」


 私が答えたら、リーナは苦笑。


「皆もエルザに会いたがっているわ。折角学校に入って合える様になったのに、また十日も会えないんじゃ、そりゃ寂しいわよね。あ、明日の朝食はどうなの?」


 後ろを振り返ると、侍女達は、渋い顔。


「難しかもしれない……でも、お弁当、どうしよう……」


 私が悩みだしたら、ブランシェが


「それでしたら、ユーディト様かカタリーナ様に頼まれては如何でしょう。暫くは、食事は部屋でお願いしたいところです」


 それを聞いて溜め息を吐きつつ


「どうも、しばらくは食事を一緒に摂るのは無理そうね……ブランシェ、昼食はどうしたら良いの?」


 私が問えばブランシェは真面目な顔で答えてくれた。


「出来得るのであれば、レストランではお止め下さい。部屋を用意いたしますので、そちらでお摂り頂けると安心なのですが……」


 その声が聞こえたらしいリーナは


「それで構いません。部屋を用意頂けるのでしたら、そちらで摂ります」


 ブランシェは申し訳なさそうに


「お話中、申し訳ございません。食事は用意させますので、御安心下さい」


 そのブランシェの言葉に、私は慌てる。


「あの、食事、私は自分で作ったりして良い? 折角ルディアス殿下やフリードリヒ殿下の分も作るのだから、自分の分くらい、大丈夫よ」


 ブランシェは心配そうに


「御身体が心配ですが、それがエルザ様に取っての最良であるとも思っておりますから、食事の方は、カタリーナ様の分のみの用意で構いませんか?」


「ええ、私はそれで大丈夫。リーナは?」


 私が問えば、リーナは楽しそうに


「ええ、それで私も構いません。よろしくお願い致します」


 ブランシェは恐縮した様に


「出過ぎた真似を致し、申し訳ありません。必ず手配致します」


 それを聞いていて、思う事が。


「リーナの分も、私、作ろうか?」


 リーナは目を瞬かせ


「え!? 嬉しいけれど、私まで、というのは、流石に申し訳ないから、遠慮しておくわ」


「そう? 三人分も、四人分も、そう変わらないわよ?」


 リーナは悩ましそうに


「うーん……エルザの料理、好きなんだよね……でも、いや、流石に……」


 妥協案を出してみよう。


「なら、たまにリーナの分も作るというのは、どう?」


 リーナは、申し訳なさそうに


「本当に良いの……?」


 私は笑顔で肯く。


「勿論!」


 リーナはおずおず


「それなら、たまに、お願いします。たまにで良いからね! 私も自分で作りたいとも思ってるから」


「ええ、任せて。それで、お弁当箱、どうする? 明日、放課後一緒に買いに行く?」


 私が問えば、リーナは目を輝かせる。


「良いの!? うん、一緒に行こう!」


「うん。それなら、明日の放課後ね。今日行ってきたお弁当箱の専門店、色々在って面白かったの。値段も手ごろな物から高価な物まで様々だから、本当に見ていて楽しいのよ」


 リーナは嬉しそうに


「わあ、楽しみ! 前世から、お弁当箱、好きでね。色々見てたりするの、大好きだったの。自分で中身を作るっていうのは無かったけれど、お弁当箱だけでも結構見て回ったなあ」


 その言葉に、一安心。


「良かった。それなら、放課後ね。あ、今日は夕食後にも話あるのだったよね。そちらも大丈夫だから、安心してね」


 リーナは微笑みながら


「ありがとう。それなら、明日の放課後と、今日の夕食後ね」


 そう言って、リーナとの通信は終了した。



 そうだ! フリードに、今日のお出かけのお礼、言わなくちゃ。

 思い立ち、連絡してみる。


「どうした?」


 直ぐに出たフリードは、心配そう。


「あの、今日のお礼を言おうと思って……ありがとう、フリード。今日は本当に楽しかった。フリードともう少し一緒にいたかったよ。また一緒に行こうね」


 フリードの表情が柔らかく、嬉しそうなものに変化する。


「それは良かった。何か不手際でもあったかと心配した。ああ、また共にあの喫茶店に行こう」


「あのお店以外も一緒に行きたいかも……ダメ、かな……?」


 そう、本当に楽しかったから、別の所にも、一緒に行きたいと思うのだ。


「勿論構わない。私もエルザとの外出は本当に楽しかった。また様々な場所に共に行こう」


 フリードが優しく言う言葉に、勢いよく肯く。


「ええ、一緒に行こうね!」

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