第23話
「――――」
リーナの言葉を自分なりに咀嚼し飲み込み、理解した途端、慌ててしまった。
「――――っ! それって、凄い大事じゃない!?」
リーナは私の驚き様に肯き
「うん、大事」
それだけ言って、考え込む。
「あの、ね。思ったのだけれど、神様って、どこの、神様?」
私なりに気が付いた事を言ったら、リーナは不思議そうに首を傾げる。
「どこの、って、どういう事?」
私は言うか言うまいか悩んだが、彼女がみだりに吹聴しないのは知っているし、意を決する。
「あのね、これは口外禁止と言われている事だから、そこの所は、お願いね」
リーナは神妙に肯く。
「了解。それで?」
私は、もう一度唇を湿らせる為にリンゴジュースを一口飲んでから、話しを続ける。
「この世界は、”異界のモノ”、つまり別の世界の存在に、干渉されているみたいなの」
リーナは、眉根を寄せつつ何かを飲み込む様に考え込む。
「――――それって、つまり、神様関連が、”この世界の神様”じゃない可能性もある、って事よね」
リーナの言葉に、肯く。
「うん。前も話したような気がするけれど、転生した男が”神”と呼んでいた存在が、本当はどこの誰で、どんな存在なのかはまるで分からない。それなら、”別の世界の神様”、という事は大いにあると思う」
リーナが、ハッと何かに気が付いたような顔をしてから、表情が険しくなる。
「――――っ、ねえ、あのさ、もしも、もしもの話だよ。その、”この世界に干渉しているっていう神様”さ、”私達が元々居た世界の神様”って可能性は、ないのかな?」
言われて、私なりに考えてみる。
確かに、私とリーナがこの世界に転生した訳だから、接点はある。
それに、勇の事だ。
勇の気配もこの世界に来てから感じたのだ。
そして、アレの存在。
幻獣の森で私達を襲った相手。
アレが元居た世界でも私に襲い掛かったのを、今の私は思い出している。
「――――そうだね。私やリーナっていう二人もだよ、二人も同じ世界から同じ世界に転生って、何かあるのかも知れない。正確には、三人、かもしれないし、もっと増えるのかどうかは謎だけれど」
リーナも勢い込む。
「そうなんだよね! ”私達の元居た世界の神様”が干渉しているって可能性は、もの凄く高い訳だ。ただ、増えるかどうかは、今後注視、って所かな」
そうは思う。
可能性は限りなく高いのではないかと確かに思える。
まだ増える可能性は、常に考えていなくてはならないのだろう。
だが、疑問が。
「……でも、理由は何? ”神様”が別の世界に干渉する理由、それは何?」
私の言葉に、リーナは固まる。
「それに、もっと気になっている事があるの」
私は、姿勢を改めて正し、リーナを見る。
「何? まだ何かあったっけ?」
リーナは不安そうな顔になっていた。
「うん、これも前に言ったことだけれど、口外厳禁ね。ルーとの個人的な会話だけど、配慮をお願いします」
「勿論。それで?」
リーナの了承を得て、思い出しながら、自分の思った事を言ってみる。
「あのね、”神様”に転生させてもらったって男、居たでしょう? あの男の事をルーは見え難かったって言っていたのは、話したよね?」
リーナはコクンと肯く。
「確かに聞いたね。だから、”神クラスの存在”が関わっているらしいってのは分かった。でも、それが?」
私は冷静になる様に務め、言葉を続ける。
「それでね、詳しく話すと、あの男は日本語を話していたし、容姿も日本人だったと思う。だけど、ルー曰く、あの男は私とは似ているけれど、微妙に異なる世界から来たのだろうっていうの。これって、どういう事だと思う?」
私の問いに、リーナは硬直してしまった。
徐々に解凍されていくリーナ。
ちょっとぎこちなくジュースを飲み、大きな溜め息を一つ。
「――――ああ、うん。そうか。うん、何とか自分なりに解釈できたかな」
リーナはそう言って、姿勢を正し、今度は私を真剣に見つめる。
「それについての、私なりの解釈、聞いてくれる?」
それには即座に肯いた。
「勿論。それで、一体どういう事だと思ったの?」
私の問いに、リーナは苦笑しつつ
「うん、あのさ、紙とペン、貸してもらえる? その方が説明しやすいと思う」
「それは勿論良いよ。ちょっと待ってて」
私はペンと紙を取りに机のある部屋へと向かい、戻ってきたら、リーナは難しい顔で腕組みしつつ目を閉じていた。
「持ってきたよ。はい、これ」
私が差し出すと、リーナは表情を和らげ、
「ありがとう。少し待ってね。今、軽く図にしてみるから。まあ、図って言っても、もの凄く簡単な物で、これで図かよって感じは否めないけど。そこはごめんね」
断りを入れてから、ペンを走らせるリーナ。
「――――これで、良い、かな。それじゃ説明するけど、この縦の線は、過去から未来へと流れている時間軸だと思ってね」
リーナが示した紙には、一本の線が描かれている。
そして、その線について、一方の端には『過去』、もう一方の端には『未来』と書いてある。
それを大きな丸で囲み、”前世の世界”と書いてある。
別の丸には、”今いる世界”と記してあった。
気になったのは、『過去』と書かれた所に近い場所に、私の前世の名前が書かれている点だろうか。
「まず結論。私の考えだと、瑠美とその男は、元居た世界を出た時間が違うんだと思うのよ」
その言葉に、首を傾げるしか、私には出来なかった。
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