第24話
朝食は焼き立てのパンとスクランブルエッグ、炭火で炙った厚いハムと、同じく炙った薄切りトマトとウィンナーに、様々な野草や山菜のおひたし、色々果物入りヨーグルトと熱々の紅茶だった。
本当は手伝いたかったのだが、昨日は思ったより疲れたのと、遅くまでフリードと話していたのもあって、起こされるまで寝てしまったのだ。
朝食はバンガローごとに食べるみたい。
部屋割はルディとフリードが一緒のバンガローで、アンドとフェルが同じ、ギルとリアが一緒のバンガロー。
シューとディルが同じバンガローで、エドとユーディは其々個別のバンガローだ。
外のテラスで、優しく降り注ぐ日差しの中で食べる朝食は格別である。
熱々の出来立てのパンが美味しい。
丸っとしていて可愛いパンだ。
具材を挟んでサンドイッチみたいにして食べた。
簡単に作ったとディート先生は言っていたけれど。
昨日の段階ではコーンブレッドにしようかとも思っていたらしいが、朝になって気分的に止めたらしい。
そう言えば前世でも色々なパンを作った。
こういうフライパンで焼くパンって確か、ベーキングパウダーを入れて、フライパンで作った事もあったなぁ。
ディート先生曰く
「パンなんてのはまあ、最悪、小麦粉と塩と水でもありゃ出来るしなぁ。程々の竹の筒か皮を剥いた木の枝さえあれば巻いて焚火で焼けるし、熱した石でも可能だしな」
あ、木の棒に巻くの、それ前世で作った事ある!
自家製ホットケーキミックスを使って作ったんだったな。
イザークが肯いているから、不思議に思って訊いてみた。
「そういうパン、食べた事あるの?」
イザークは、ちょっと首を傾げてから納得した顔で、
「ああ、姉上はまだ野外演習をした事が無いんですね」
そう言われれば、そうだ。
私は魔力無しだから、狩りの演習はおろか、野外演習もした事が無い。
ちょっと落ち込んでしまう。
イザークは私より後に家に来たのに、もう野外演習した事があるのだ。
流石に三年も経てば、貴族の教育にも馴染んできただろうし。
執事で、今回はイザークの護衛のバルドが私を安心させる様に笑って
「野外演習の最初の方は難しい物ではありません。要はバーベキューだと思って下さい。魔獣を始め令獣も出ないような場所で、食べられる野草を採取し、それを持ってきた食材と一緒に調理するだけですよ」
何だか凄く楽しそうなのだが。
野草の採取とか前世ではかなり好きだったのだ。
ヨモギは庭に生えていたのを育てて、春先にヨモギ餅とか作っていた。
何故か庭にフキも生えていたから、大事に育てて、これも春先はフキノトウを天ぷらやフキ味噌にして、それ以降はフキを色々料理して食べていたのだ。
ウコギにウルイ、コシアブラも生えていたから、採取して調理し、食べるのが楽しかった。
そうそう、シソも青と赤の二種理があったから、料理にジュースに大活躍だったのだ。
私が楽しそうにしているのに気が付いたディート先生は
「ま、野外演習はその内狩りとかも入ってくるからなぁ。狩りの演習は女は大抵堪えるんだよ。数日寝込む奴とかもいるし」
心配してくれている様だ。
案じるように私の頭を撫でつつ難しい顔である。
「弓矢とか槍の作り方は教えたろ? いざとなったら肉弾戦だから、指輪は持っといた方が良いしなぁ。ああでも女なら蹴りの方が良いか。それにエルザの場合は弓矢や剣より銃を重点的に教えるべきだろうし」
「銃!?」
聞いた事がないのですが……
この世界に銃とかあるのが驚きです。
「ありゃ? 説明した事なかったけか、銃について」
首を傾げるディート先生に、バルドが
「ディートリッヒ様、エルザお嬢様は魔力無しですから……」
それだけで通じたらしいディート先生は
「ああ、攻撃的な魔石の類は魔力無しには刺激が強いもんな。それで幻獣か、せめて妖精を得てからじゃないと実物は無理だから、説明した事がなかったのか」
それにイザークが不満そうに
「説明だけはした方が良かったのでは? 無知は時に問題です」
ディート先生はイザークの言葉に苦笑しつつ
「確かにそうなんだがな。子供は興味を持つと悪いと知ってても触ったりするだろ。ま、子供に限らないが……だが、エルザの性格ならダメだと言ったら聞いたろうしな。悪い、もっと早く教えるべきだったな」
私の方を見て申し訳なさそうにしている。
「あの、銃の事を知るの、遅すぎるのでしょうか……?」
不安で訊いてみたのだが
「そうでもない。ただ、エルザは映画とかドラマとかあんまり見ないだろうから、知らないのは家の教育方針の一つだしな」
ああ、娯楽映画とかドラマとかあるのか、やっぱり。
ニュースは見た事があるのだ。
それから教育番組や自然や動物のドキュメンタリー。
何故我が家では娯楽系を見せないのか不思議ではある。
「銃は一応危険物だから、子供は大人の監督下じゃないと使えないしな。魔法学校に入学したら、学校の許可を受けて教官の指導の下か緊急時に使えるんだが、大人でも許可なしには所持出来ない」
成程、前世のアメリカでの銃の扱いに近い物があるのかな。
「ディート先生、銃ってどういう物なのでしょうか?」
「ああ、実物見た方が早いな――――これだ」
そう言ってディート先生が指輪型の空間収納から取り出したのは、前世の映画とかで見た事のある銃と形の似た物だった。
説明してもらったのだが、前世の銃の薬莢とか入れる所に魔石を挿入して、この魔石の魔力を魔法に変換して打ち出す物らしい。
魔石の魔力が切れたら、自分の魔力を注入する事で使えるとか。
魔力を注入した場合、魔力の消費は普通に魔法を撃つより少なく済む優れものだという。
魔石の魔力や注入した魔力を増幅して変換する装置とかが組み込まれていて、魔力の増幅幅が大きい程高価なのだとか。
あと、形状とか色々あるという。
前世でいう、マシンガン的な物とか、ショットガン的な物、ライフル的な物とか様々らしい。
ミサイル的な物もあるみたいで、本当に色々あるという。
前世の兵器の類みたいな物なのだろうか。
驚いていた私にディート先生は溜め息を吐きつつ
「もう妖精は得ているが、一応幻獣を得ないと、攻撃的な魔力を常時浴びているのは魔力無しには危険でな。なるべくなら護身用に持たせておきたいんだが……」
笑顔で拳を握ってガッツポーズ。
「それについては頑張ります」
うん、頑張るけど、気長に行こう。
焦っても仕様がない。
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