第17話
この頃シューは凄く頑張っているみたいだ。
それでも休みの日はお茶会にも出席していて大変らしい。
シュテファンもディルクも紫の瞳だから、主に皇族や四大公爵家主催のお茶会に出席する義務があるみたいだ。
将来の為に顔を繋ぐのは必要だからね。
イザークはまだお茶会を主催出来ない。
慣れていないのもある。
それでも私のお茶会に出席するし、皇族主催や四大公爵家主催の物に出ているけれど、見た限り大丈夫そうだ。
これなら来年には主催のお茶会を開いてもいいだろうとお父様もおっしゃっていた。
夏だからお茶会はない。
舞踏会が多い夏や冬はお茶会は開かれないからだ。
ギラギラと感じる太陽の日射しの元、水の中に入るととても気持ちが良い。
前世の太陽よりは優しいのかもしれないが、それでも日差しは強い。
私はこの年になって、ようやく泳ぎを習っている。
皆はもっと幼いころから泳ぎを習うというが、私は魔力無しだから、身体が弱いし疲れやすい。
だから少し成長してから、という事になったらしいのだ。
やっぱり自宅で泳いでいる訳だが。
家にプールが二種類あるのだ。
一つは長方形の深い、私の感覚だと市民プールにある競技用の物位ある物だ。
二つ目は浅い所から段々深くなる波のあるプール。
それなりの大きさだと思う。
この波のあるプールは全天候型でドーム内にあるから本当に驚く。
家でテーマパーク施設っぽいのがあるのはビックリだよ。
そんなに大きくはないと思ったが、前世で行った事のある施設が大きかったからだろうし、実は結構な大きさかも。
領地のプールにも入った事がある。
お父様は水着で、お母様は濡れても大丈夫な様な格好だった。
帝都でも、お父様と一緒に入って遊んだ事がある。
どちらも本当に楽しかった。
プライベートプールは良い。
前世でも従兄弟の家のプールは楽しかった。
市民プールとかの公共のプールに行くと小さい時から嫌な目に必ず遭うから、行かなくなったものだ。
夏だからと外のプールをどうやったのか浅くして、私でも立てる様にして教えてもらっている。
教えてくれるディートリッヒ先生は身体機能の向上と戦闘技術の師匠だ。
後は歴史等色々教えてくれている。
それで泳ぎも教えてくれているのだ。
ディートリッヒ先生は鋼の様な銀髪に黒い瞳で背も高くて、恐ろしく整った顔だと思うが、爬虫類を思わせる顔なのです。
そう、危険で底が見えないというか……
陽気で楽しい、気安い先生なのだが。
うん、今は先生をろくに見れない。
緊張する。
前世で見た競技用のだろう水着なのだが、上半身が裸で目のやり場に困るのだ。
見事に割れた腹筋が素晴らしいですね、先生。
それ以外にも、私が泳ぐからと心配して他の教科の先生も来てくれた。
私、どれだけ身体が弱いの。
魔力無しって凄いな……
クレメンス先生は語学と数学とか色々。
文系と理系どちらも教えられるって凄いなと思う。
落ち着いた金髪に茶色の瞳でがっしりした体型のイケメンさんだ。
結構ごついと思う。
ディート先生よりクレメンス先生の方がよっぽど戦闘技術の先生っぽいのは何故だ。
最後に女性のヒルデガルト先生。
明るい金髪に茶褐色の瞳の美女だ。
礼儀作法や舞踏を始めやっぱり色々教えてくれている。
こちらの家庭教師は万能なのだろうか。
皆、本当に様々な方面に詳しいと思う。
ヒルデ先生の水着は競技用で、見事なプロポーションは隠せない。
背も高くて手足も長い上に、出るとこは出ていて引っ込むところは引っ込んでいる本当に抜群の容姿である。
私の理想かもしれない。
そんな先生達に囲まれつつ、夏の眩しい日差しを浴びながら楽しく泳いでおります。
帝都は中々な暑さだが、帝国内やレムリア王国にはもっと暑い場所もあるという。
「名無しの王の大陸」にもあるらしい。
そっちの大陸の事も分かっているのは凄いな。
やっぱり暑すぎるのは苦手だ。
寒いならまだ結構耐えられる。
この国に冷房があって助かった。
湿度は前世の日本より気持ち少なめな様な気はするから、快適と言えば快適だ。
パラソルの下で高級そうなデッキチェアに座りつつ、桃ジュースを飲みながら休憩中。
冷やされていて美味しい。
氷も果汁で出来ているのが嬉しいな。
ディート先生はメロンソーダだ。
クレメンス先生はアイスコーヒー。
ヒルダ先生はアイスティーだな。
ディート先生、メロンソーダ、好きなんだよね。
コーヒーもお茶系も普通にストレートで飲むけれど、メロンソーダが一番好きみたい。
甘党って訳でもないみたいなのだが。
休憩時間にディート先生に訊いてみた。
「先生、外出って難しいですか? 街に行ってみたいのですが……」
難しい顔をして
「そうだなぁ。動物園、美術館に博物館、植物園と水族館や劇場も行きたいって言ってたもんな。教育的にも良いとは思うんだが」
腕を組んで悩んでいる。
しかし絵になる先生だ。
美術品かと言いたくなる程決まっている上に目の保養だ。
「我々で護衛すれば、そう難しくはないのでは?」
そう言ってくれたのはクレメンス先生だ。
ディート先生より腹筋カッチカチな気がする。
でも無駄な筋肉という気がしない。
何と言うかボディービルの見せる筋肉じゃなくて、戦うための筋肉という感じだ。
「そうですね、ディートリッヒ先生、いかがですか?」
ヒルデ先生も援護してくれた。
先生達はいつもディート先生に意見を仰ぐ感じだ。
まとめ役というか中心はいつもディート先生。
「いっそ、ルディアス殿下とフリードリヒ殿下も連れて行くか。あとイザークも。ハインもイザークはこの国に慣れていないと言っていたしな。ついでだ」
どうもディート先生とお父様は知己らしくて、ハイン呼びになるのだ。
それで、何故、ルディとフリードの名前が出たのだろう……?
訊いてみたら
「うん? 両殿下にも教えているからな、俺。皇帝陛下直々に頼まれたら断れんだろう」
あっさり言われた言葉に驚く。
皇帝陛下直々って凄すぎる気が。
驚いた私にディート先生は
「あのな、魔力が強い奴っていうのは、魔力が弱い奴の感覚が分からないんだ。で、その逆も然りな訳。手がある奴に無い奴の感覚が分からないみたいなものだな。で、弱い奴に強い奴が教わっても感覚が理解できないからダメなんだ。だから、一定以上に魔力が強い奴に教えられる人間ってのは限られる。どうしても教師がダブっちまう訳だな」
成程。
あれ? でも私は魔力無しなのだが……
疑問を察した先生は
「エルザはある意味護衛も兼ねてだ。俺か、クーかヒルデの誰かが常に屋敷に居る様にしてあるんだよ」
そうだったのか。
どうして気が付かなかったかな、私。
落ち込んだ私の頭を撫でつつ
「気にすんな。エルザが鈍いのは今に始まった事じゃないだろ。行きたいところ、言ってみろ」
慰めてくれているっぽいのだが、素直に喜べない。
「あの、音楽堂で音楽聴いたりとか、美術館や水族館に動物園、植物園、街で店とか見たいです」
先生はとても難しい顔になった。
「街で店はまだ無理だ。貸し切れる音楽堂とか美術館と博物館、劇場や動物園に水族館だな。植物園はルードルシュタット家かケーフェルンブルク家で、って訳にもいかないよな。これも検討しとこう。音楽とかは家に呼んで聴くのも手だな。そう言えばテーマパークとかは行かなくて良いのか? 色々あるぞ」
「高い所も速いのも苦手なのです……」
「そうか。大きくなってから行ったって良いだろうしな」
軽く先生は言ってくれて、ちょっと安心した。
高い所や速いのも苦手なのはちょっと気にしている。
やっぱり戦闘に響きそうだし。
街の店は無理か……ちょっと落ち込む。
でも美術館とか植物園にも行けそうだ。
ギルやフェルの家は植物が多いけれど、他の場所にも行ってみたい。
音楽は楽団に来てもらって演奏を聴いた事は何度かあるけれど、劇場はどうなっているのか興味が尽きなかったりする。
でも、貸切ってその日その施設に行きたかった人に迷惑かけるよね。
気が咎める。
しかし貸切にしないならしないで、やっぱり警備とか色々やっぱり迷惑かけるだろうし、これは自分の立場が前世とは違うと受け入れるのが良いのかも。
私がちょっと暗くなったのを察したらしく
「貸切以外とか街中を見て回るならやっぱり幻獣がいないと難しいな。妖精じゃ心配だし」
頭を撫でながら言うのだが、ちょっと疑問になった。
今まで、魔力無しで幻獣を得られた割合ってどれくらいなのだろう?
「あー、皇祖の妃だった方以外、記録が無いな」
訊いたらサクッと絶望的な事を教えてくれた。
「皇祖の妃だった方は皇祖とは幼馴染だったって話だ。相当過酷な旅を魔力も無く成し遂げたんだからなぁ。まあ当然か。皇祖も四大公爵家の先祖も色々手助けはしたろうが、生きてこの地にたどり着いただけでも凄まじいからな」
付け加えられた事も私の真っ暗な心情を明るくはしてくれない。
幻獣を得るってとても難しいのが実感できた。
自分の身体の弱さを考えると、大陸の端から端まで旅をするとか無理にしか思えない。
それをやり遂げた皇祖の妃だった人って素直に尊敬する。
帝宮や四大公爵家かエドの家にしか行けなかったから、他の場所にも行けるのは嬉しい。
ただ、幻獣と言えば、先生達も誓約を交わしたのだろうか。
見たことないのだが。
「ああ、俺達三人は幻獣と誓約を交わしてる。エルザは魔力無しだから、幻獣か妖精を得られるまで、父親とかの近い身内の幻獣以外の強力な幻獣の側にいたり見たりもしない方がいいんだ。色々影響を受けて、身体を壊したり、最悪死ぬから。妖精の加護だけじゃ色々心配だからな。まあ、アギロがいたら守ってもらえるだろうが」
とても怖い話を聞いた。
だからアンドのお父様達の幻獣を私は見た事がないのか。
それで、お父様の幻獣であるはずが私の側にアギロが良くいる訳なのね。
無知って怖いなと改めて思った。
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