第13話

 七歳になって、お茶会を主催する事になった。

 私の初めて主催したお茶会に呼んだ貴族の令息や令嬢は父が厳選したらしく、良い方ばかりで自然と親しくなったのだ。

 それ以前にも何度か会った方もいたが、改めて話して楽しかった。



 ルディやフリード、アンド達四大公爵家の面々にエド、それからシュテファン。

 ディルクも参加する事になって、知り合いが多くてとても安心した。



 もちろん初めて会う人達も沢山いて、刺激が多かったけれど。

 私はちょっと人見知りな所もあるので結構疲れた。



 春で天気も良い日だったから庭にも出れる様にしていたのだが、気持ちの良い風が優しく吹いて、花の匂いも漂っていて本当に気持ちが良かったのだ。



 ルディ達曰く、大貴族なら代々懇意にしている貴族や士爵の取り巻きがいて当たり前との事。

 お父様には今回のお茶会に来ていた人達は大事にするようにと言われた。

 それに否やはない。

 ただ新しい友達が増えたみたいで嬉しいのは確かだ。



 その中に紫の瞳の公爵令嬢がいた。

 彼女はユーディト・リューネブルクという。

 金糸雀色の髪に紫水晶色の瞳で、綺麗だがきつい印象の美少女だ。



 ルディにフリードに四大公爵家、エド、ディルクにシュテファン、そしてユーディト。

 特別な瞳を持つ少年少女が全員このお茶会に出席してくれた。

 とはいえ、大半は友達なのだが。



 お茶会に呼んだ人数が多いから混乱しない様にしないと失礼だし、どうせなら仲良くなりたいと思う。

 出会ったからには友好な関係でいたいと思うのは贅沢なのだろうか。






 春も終わりの頃、リューネブルク公爵令嬢のお茶会で私は皇女殿下であるエリザベートにケガをさせられた。

 ケガと言っても爪で顔を引っ掻かれた位だ。

 その程度の軽い物なのに、公爵令嬢はしきりに謝っていて申し訳なく思う。



 お父様が大激怒で、第三皇子殿下とその母と娘に筆頭大公爵家として正式に抗議したらしい。

 お祖父様やお祖母様も出張ったという。



 その上でお祖父様とお祖母様、お父様の三人共、私にしきりに謝った。

 話を聞いていると、この頃エリザベートが大人しいから油断したらしい。

 少しは真面かと期待もしたという。

 やっぱりあの女の娘だと吐き捨てていた。



 私はそんなに気にはしていないのだが、三人の剣幕が凄くて驚いた。

 彼女の母親は一体何をしでかしたのかと、本当に疑問だ。



 伝え聞いた所、第一皇子であるアルブレクト殿下や、第二皇子のゴットフリート殿下も抗議に関わったとか、怖い話を聞いた。

 もの凄く大事になっていたみたいだ。



 それで先日の事を思い返していた。





 この頃、第三皇子の娘である例のエリザベートと仲良くなったと話たら、ルーとフリード、エドとギルが異口同音に


「止めろ」


 と言われ、困惑した。


 だから、一生懸命説明した。

 彼女からこの前の事を謝られた事。

 母親に言われたからだと説明された事。

 これからは仲良くして欲しいと言われた事。



 だが、話せば話すほど、四人の顔は怖くなる。

 ついでにアンドとフェルも厳しい顔。

 リアはもう、鬼の様だ。

 シュテファンは呆れ顔をしている。

 イザークは心配そう、に見えた。


「えっと、どうしたの?」


 そう訊いたのだが


 ルーが苦い顔で


「そなたの節穴振りに、頭が痛い」


 きっぱり言い切られた。

 皆も頷き、頭を押さえている。



 ああ、そう言えば、中学生になった時、小学生から仲が良かった子を、それほど仲良くなかったけれど、まとわりついて来た子にいつの間にか盗られていたな。

 その仲良くなかった子が可哀相になって、邪険に出来なかったのは私だ。

 気が付いたら独りぼっちだったな。

 幼稚園からの友達の舞ちゃんとはクラスが違ったから、クラスでは独りになってしまったのだ。



 しかも運動会で従兄弟と親しくしていたら、私を独りにした娘がまたまとわりついて来たんだったか。



 うん、私はあんまり人を見る目が無いのかも。

 抜けているらしいのは分かっているのだが。





 この件があって、ちょっとエリザベートと距離を置いたのだが、気に入らなかったのだろうか。

 せっかく仲良くなったと思ったら、避けられたから頭にきたのかな。

 突然目を潰す勢いで爪をたてられたのには驚いた。

 何とか避けれて良かったと思う。

 頬を引っ掻かれただけで済んだしね。



 傷跡も残らなかったし、子供の爪で引っ掻いただけだからそんなに深くはなかった、と思う。

 かなり痛かったが、私は割と痛みに過敏に反応するからだろうし、問題はない、よね。

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