第4話
色々思ったり考えている内に三歳になった。
いくらか話せるようになったのは成長だと思っておく。
だが……どうしても呂律が回らず、発音がだめだ。
前世の私の同年齢より残念なのは確実だ。
全ては発音、発音にある。
聴いていただけでも難しいのはわかっていたが、予想通り、いや、予想以上というべきだろう。
くっ、こっそり一人で日本語を話したらしっかり話せたから、こちらの言語の発音が難解すぎるのだ。
それでも、言葉は日々大量に覚えている最中。
幼児の脳味噌さまさまだが、やはり必要に迫られているのが大きいかもしれない。
本の読み聞かせも、いつの頃からかしてくれるようになった。
お父様がしてくれたり、体調の良い時はお母様だったり、侍女の人達の時が一番多いかな。
寝る前以外にも、普通に遊んでいる時も良く読み聞かせてくれる。
最近は、
「エルザ様がハインリヒ様やテレジア様や私たちに読み聞かせて下さいね」
とか
「お父様はエルザに声に出して読んで欲しいな」
みたいな事を言われるのでがんばっているところ。
文字と言葉を一致させるのは大変だが、これも試練と励んでいる。
しかし……お父様もお母様も執事さんに侍女さんたちも、私を大袈裟にほめすぎ。
前世という下地があればこそだと思うのですよ、多少覚えが早いのは。
断じて天才だからではないのですよ……
みんなして私を持ち上げ過ぎて、いたたまれない……
何せ、皆々様、うちの子天才! うちの子最高!! って感じだからなあ。
みんなメロメロ過ぎて、目が曇りきっているよ……
ちょうど可愛い盛りだからだよね、今だけだよね、そうだと言って……
うう、胃が、胃が痛い……
そんなこんなで発音に四苦八苦してはいるが、充実した日々を送っている。
そして少しずつ、私の生まれた国や、家の事がわかってきた。
誕生日にお祝いをするという習慣はこちらにもあるようで、何度目かの普段より豪華なご馳走やケーキが出た食事の時、
「エルザもこれで三歳だね」
みたいな事を言われたから間違いない。
料理は西洋風だと思う。
パンが主食の様だし。
やはり離乳食は辛かった。
もっと形のある物が食べたいと思っていたから、今の食事には満足だ。
元々、和食、洋食、中華と何でも好きだったから問題はない。
かなりご飯が食べたいけれど、無い物は仕様がない。
でも、丼、食べたいなぁ……
三歳になったら色々忙しくなって大変だ。
なんでもここは領地にある城館で、帝都にある屋敷に移動する必要があるのだとか。
普通の貴族は領地で生まれて、帝都には五歳の誕生日前までに領地から異動し、五歳の魔力検査は帝都で受け、幻獣か妖精を得るまでは帝都で暮らす。
幻獣か妖精を得たら帝都と領地を行き来するのが一般的な貴族の生活、なのだとか。
だが我が家の場合、母の体調がいつ悪くなるかわからないので、調子の良い今の内に帝都に向かうそうだ。
私も体調を崩しやすいので、母と私の調子が良いから決めたのだろう。
そういえば、気になっていたのだ。
この家、隙間風、無いな、と。
その上、防音、しっかりしているよな、とも。
家が広すぎるから音を遮断している、だけではないと思う。
一番気になったのは、断熱材、使っているのではないか、という点だ。
何故ならどの季節もわりと快適なのである。
あれ無いと悲惨なんだよね。
前世で幼い頃に住んでいたアパートには使われていなくて、夏は呆れる程に暑くて、冬は尋常じゃなく寒かった。
防音も無くて、隣やら上の音はまるっと聞こえていたし、隙間風も五月蝿いやら寒いやらだったのだ。
その上結露もないのには驚いた。
高気密っぽいのに凄いなと思ったのだ。
あれ? 前世の幼い頃より、絶対に良い生活環境だよね、これ。
照明も明るくて、高い天井にあるのを、何か小さなリモコンみたいなのをポチっと押すだけで消したり明るさを調整している。
それ以外では音声でつけたり消したり色々調整。
暑い時や寒い時は、また何か小さなリモコンみたいなのをポチっとすると、暖かくなったり涼しくなったりする。
これも音声でつけたり消したりプラス様々に調整可能らしい。
勿論、暖炉も有って使う事もあったり。
良く観察していると勝手に発動してるのじゃないかなと思うときもある。
肌寒いなと思うと暖かくなったり、暗いなと思うと明るくなったりするのだ。
自動的に動くようにセンサーがあるのかもしれない。
それで自動で調節するとか。
トイレも水洗で、シャワートイレなのも嬉しい。
これって上下水道が整っいるという事だよね。
お風呂も、そう前世の日本と変わらない。
洗い場が有って、浴槽がある。
浴槽のお湯が出るところは、蛇口というか石造りの、旅館にあるような温泉の注ぎ口みたいだ。
シャワーはホースが付いているのと、高い所にある物の二つがある。
浴槽にある注ぎ口と各々のシャワーは、温度調節と勢いの調節が可能で、一度調節すればまた弄らない限り同じ温度と水の勢いだ。
このお風呂場は結構大きいと思うのだけれど、ベッドのある部屋には必ずこれくらいのお風呂場が付いているとか。
さらに大きな大浴場と露天風呂が家にあるらしい。
私はまだ小さいからダメだが、大浴場と露天風呂には温泉を引いているらしいとも。
温泉、出るんだ……
全て魔導具という物で、魔石とかをエネルギーとして使っている、とか何とか。
そうそう、帝都の屋敷もここと内装は大体同じだという。
ただ、領地にあるこの城館? よりは少し大人しめな外装だとか。
温泉は帝宮の後ろの山から引いていて特別なのだと聞いたのもあり、帝都の屋敷のお風呂に入るのが楽しみだ。
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