第6話 かくれんぼ



 子どものころ、友達のAちゃんと自宅で遊んでいた。かくれんぼだ。


 文緒の家は古い日本家屋で、ふすまや押入れや雨戸など、子どもが隠れていられる場所がいっぱいあった。


 文緒が鬼になっていたときだ。

 障子しょうじの穴から指が一本出ていた。前に文緒があけた穴だ。


「あっ、Aちゃん。見ぃつけたぁ」


 文緒はその指をにぎりしめた。

 しかし、Aちゃんの返事はない。


「Aちゃん?」


 問いかけるが、無言。

 不思議に思って、にぎっている手を離そうとしたが、なぜか手がひらかない。


 文緒はあせった。左手で右手を持って、強くひっぱった。

 すると、スポンと指がぬけて、勢いあまった文緒は廊下に尻もちをついた。


 右手をひらく。

 手のひらのなかから、人差し指が出てきた。どす黒くなって、切断面から糸をひいている。


 悲鳴をあげて、文緒はそれをなげだした。


 あまりにも騒いでいたせいか、Aちゃんがやってくる。


「文緒くん。さっきから一人で何をさわいでるの?」


 Aちゃんが来たのは、廊下の奥からだ。さっきの障子の向こうではない。


「Aちゃん……さっき、その部屋にいなかった?」

「いないよ。ずっと台所にいたもん」


 Aちゃんが障子をひらくと、部屋のなかには誰もいなかった……。

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