第4話 竜神 佳奈
キーンコーンカーンコーン。
そんなことをしていると、学校のチャイムが鳴った。
「…やっべ!綾、今のチャイムは多分
「入学初日に遅刻してしまうのは、流石にまずいですね!急ぎましょう、翔也!」
やはり、女の子から下の名前で呼んでもらうのも悪くないな…。等と、口を緩めながら翔也は綾と共に廊下に出る。
しかし、廊下に出るや否や、綾はオロオロとしながら翔也に声をかける。
「ど、どうしよう…。私、自分のクラス知りません!!」
「あぁ、それなら大丈夫だ!綾は俺と同じ一年B組だぞ!」
困っている女の子を助ける。それは、男として尊敬すべき行為だ。まして、入学初日の綾からすればとても頼りになる存在であろう。
「えっ、なんで翔也が知っているんですか!」
当然の質問である。なぜ、翔也が綾の教室を知っているのか。
「リサーチ済みだぜ!」
右手の親指を立てながら、ニカッと歯を見せる翔也。
「リサーチって…?」
綾は、その意味を考えたが、きっと運んでいる時かなんかに、張り出されていたクラス名簿でもみて覚えてくれてたのだな、と思い気にしなかった。
教室に小走りで向かっていると、一年B組の表札が見えてきた。
「綾!あそこが俺らのクラスだ!」
「なんとか間に合いましたね!」
教室が見えた所で、スピードを落とし何事も無かったかのように二人は、一年B組の教室に入る。
自分の席の上に置いてある、名前のプレートを見つけると綾はその席の方へ向かい、持っていた荷物を机のカバン掛けにかけた。
軽く息をつくと辺りを見渡す。やっぱり、元女子校とだけあって男よりも女の子の方が多いなぁ。そんなことを考えながら、右隣へ視線を向けると隣の席の人と目が合った。翔也だ。
「…隣の席だったんですね!」
「おう!改めてよろしくな!」
キーンコーンカーンコーン。
周りを気にしながら小声で会話していると、丁度HR開始のチャイムが鳴る。
いよいよ、今日から新しい学校生活が始まるのだ!!綾だけではなく教室にいる全員が、期待に胸を踊らせていた。しかし、一番居なくてはならないはずの人物がこの教室には居ない。
担任の教師である。
HRが、とっくに始まっているはずなのに一年B組の教室には、未だそのような人は見当たらない。やがて、教室がざわつき始める。「先生は…?」「HRしないのかな…?」そんな、不安の声が漏れ始めた時だった。
パチン──と、手を叩く大きな音が教室中に響き渡る。
一同は、音のした方へ注目する。するとそこには、天使を思わせるかのような白い長髪に、透き通るような外国人のような肌と、湖のように澄んだ青い瞳を持つ、とても綺麗な女の子がいた。
翔也は、口元を緩めながら声を漏らす。
「あれが噂の、
すると、またしても教室内がざわつき始める。「もしかして…。」「まさか…。」彼女を知らない者は、どうやらいないらしい。
綾を除いては…。
「翔也、あの人はいったい…?」
「おまえ、知らないのか!?あの噂を!!」
「あの噂…?」
「学校中の全ての男があの美貌に魅了され告白するも、その男達を全て振ったっていう……」
「へぇ、今初めて聞きました」
「おいおい、まじかよ……」
どうやら、その噂はとても有名らしく、少なくともこの学校の生徒であれば知らないものが居ない程だという。
異世界のことにしか興味が無いオタクを極めた綾にとって、そんなことどうでもよかったのだ。
そんな話をしていると、竜神 佳奈は女神のようなその美しい声で皆に語りかけた。
「皆さん、お静かに。きっと、なにかトラブルでもあったのでしょう。私が、先生を呼んできますので、もう少しだけお待ちください。」
そう、上品な物言いで教室内を
すると、二人の女子が同時に席を立って竜神 佳奈に、声をかける。
「佳奈、私も行くぜ!」
「わ、私もついて行きます!」
「あなた達…」
翔也は、またしても口元を緩めながら声を漏らす。
「ふむふむ、あっちの元気で明るそうな子が
何故そんなに詳しいのだろう、そう思いつつ綾は三人を見ていた。
「ただ、先生を呼んでくるだけだから二人とも待っていても大丈夫よ」
「いや、流石に待ちくたびれちまってさー、暇だし私も着いてくよ!」
「私は…その、ちょっと外の空気が吸いたいなーって…えへへ」
「そうですか…二人のお好きになさい」
竜神 佳奈が微笑みながらそう言うと、二人は嬉しそうな顔で互いの顔を合わせ、再び視線を戻すと返事をした。
「おう!」
「はい!」
二人の声が重なり、三人が教室から出ようとした時だった。
「ちょっと待ったァァァァァ!!!!!!」
綾の声が、教室中にこだまするのであった。
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