水鏡
櫻井 理人
悔い
「皆……今頃どうしているかな」
そう呟いた青年は、庭に面した一室で横になっていた。
部屋には布団の他、枕元には一振りの刀と、ほんのわずかな調度品が置いてあるだけ。対して、庭には盆栽がいくつも置かれており、木々が生い茂る。青年のいる部屋からは、塀の外の様子をうかがい知ることはできない。
青年は、懐から一枚の紙を取り出した。
「差し向かう……心は清き――」
「
家主に「沖田」と呼ばれた青年は、慌てて紙を懐にしまった。
「起きられましたか。朝食をお持ちしますね」
「……ありがとう。あの、先生から手紙は届いていないですか?」
「いや……届いていないですね」
「……そうですか」
「便りがないのは元気な証拠でしょう。きっと、皆さん立派に活躍されていますよ。医者の言うことを聞いて、安静にしていれば……あなたもきっと彼らと再会できるはずです」
「……はい」
沖田は静かに頷いた。
家主がいなくなった後、彼は懐にしまった紙を再び取り出す。
「こんなのが見つかったら、きっとこの人に迷惑をかけてしまうから……危険を承知で、政府から私をかくまってくれているのに」
それから、沖田は静かに目を閉じた。
「――行き、たかった。先生やあの人と、一緒に……」
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