足元

空飛ぶゴリラすん

第1話「オシャレは足元から」

「オシャレは足元からだ」


俺の親友「小西」は今日も高校への登校中に朝から得意の「オシャレ論」を熱く語ってくる。小西はオシャレが好きで、風貌が「ドン小西」に似ていることから、クラスのみんなから通称で「小西」と呼ばれている。俺はその影響で何故か「大東」と呼ばれることになった。俺らは高校2年生であり、小西と俺は小学生の頃からの付き合いで、いわゆる「幼馴染」ということになる。


いつも通りの通学中に、なんとなく俺は小西に一つイタズラをしようと思い立った。この日曜日に2千円で買った通学用の靴を、2万円で買ったと嘘をつくというものだ。


「小西、この新しい靴見てくれよ。カッコ良いだろう?2万円もしたぜ。バイト代を全部使っちまった。」


さっそく小西に吹っかけた。すると小西は


『いやぁ、さっきからその靴が気になっていたんだ。そのブランドなら2万円は安い買い物だぜ?お前は得をしたなぁ』


と言ってきた。その後も得意のオシャレ論をドヤ顔で語る小西。その軽快に語る小西のことがなんだか気の毒に思えてきて、俺はもう二度とあんな嘘をつくのはやめようと思った。


その罪悪感に胸が満たされた朝だった。


下校時間になり、俺はちょっとした用事を済ませるために教室に残った。その用事が終わる頃にはクラスメイトは全員いなくなり、その用事も終わったので帰ろうと思ったその時に、ふと小西の机の上に一冊のノートが置いてあることに気づいた。少し躊躇ったが、それを手に取ってパラパラとめくってみると、どうも日記が書いてあるノートのようだった。


俺はこの日記の最新の記事を読んでしまった。


『今日、大東は2万円の靴を買ったと言っていたが、あの靴はよくても2千円くらいだと思う。親友が2万円だと言ってくるのに、オレがそれを否定することなんてできなかった。人は見栄を張りたい時もあると思うし』


全てバレていた。しかも俺のことを気遣ってくれてもいる。今度 小西の好きなガリガリ君でも奢ってやろうと、そう思いながら日記帳を小西の机の中に仕舞って、帰路に就いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る