お化けの絵本

@mce496

第1話 ぼくには身体がない

ぼくには身体がない。


あの日、あの時。ぼくが人間でなくなった日から、ぼくは何にも触れることができない。


それでも確かに心はあるので、ぼくはひたすら見続けている。

人々の生活、笑った顔、怒った顔。

本当はみんな何を考えているのだろうということ。


ぼくはずっと考え続けている。


みんなどうして生きているのだろうということ。

どうしてぼくが存在しているのだろうということ。


ひとまず答えを出してみた。

きっとみんな喜び、笑い、悲しみ、怒るために生きているのだろう。


そうしてすこしうれしくなった。

身体がないぼくでも、確かに感じることはできるのだ。


ようし、美しいものをたくさん見よう。

好きなものをいっぱい見て過ごそう。


心が動くということが、ぼくが生きている唯一の理由なのだから。


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