危惧ですね

勝利だギューちゃん

第1話

「うーん、来てよかった」


都会での疲れた生活を癒す為に、僕は田舎町に来た。

空気が、とてもきれいだ。


有給を取り、気ままな小旅行。

数日後には、元の生活に戻るが、今は忘れよう。


「さてと、どこへ行こうか」

歩き出した。

あてもなく、ひたすらに・・・


僕は思う。


「ドラマや漫画だと、ここで知り合いに偶然でくわすんだよな。

そんな、ありがちな展開にならなければいいけど・・・」


心の中で危惧しながら、歩き続ける。


「あら、川瀬くんじゃない。奇遇だね」

聞き覚えのある声に、ギクっとする。


ふりかえると、見覚えのある顔がそこにはあった。

会社の先輩の、女性社員の結城さん。


会社では、アイドル的存在だ。

会社員でアイドルというのも、おかしな表現だが・・・


思わずうなだれ掛けた。


「川瀬くんは、どうしてここに?」

「有給を取って、小旅行です。先輩は?」

「同じだよ」

「そうですか・・・奇遇ですね。じゃあ、そういうことで・・・」

「うん、また会社でね・・・って、待てい」

襟首を掴まれる。


「何なんですか?」

「川瀬くん、私とじゃ、嫌?」

「はい」

「即答するな。ここで会ったも何かの縁」

そんな縁はいらない。


断っておくが、結城先輩の事は好きだ。

仲良くなりたいと思っている。


でも・・・

さすがに、旅先で知り合いと出会うと、新鮮味がない。


「とにかく、付き合ってもらうわよ」

「やだ」

「わがままいわない」


こうして、有給は先輩と過ごす事になり、振る舞わされた。


そう、先輩は超アウトドア派。

僕は、どちらかというと、インドア派。


合わない。


「覚悟を決めなさい。川瀬くん」

「クスン」

「泣かないの、男でしょ?それとも、私と出会えて嬉し泣き?」


ポジティブな人だ・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

危惧ですね 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る