『旺文社全訳学習古語辞典』旺文社
霜月六日「概観」
十一月六日(令和元年、二〇一九年)水曜 快晴
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『旺文社全訳学習古語辞典』
編者:宮腰 賢・石井正己・小田 勝
出版社:旺文社
定価:1,900円+税
発行日:2006年10月1日
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『旺文社全訳学習古語辞典』は、旺文社サイトのページに次のように紹介されている。
“
高校での学習に必要な1万2千語を収録。古文の学びはじめに最適の、わかりやすく、やさしい古語辞典。
●見やすい2段組の紙面で、すべての用例に現代語訳を並記しました。
●「絵解き」「語の派生」「識別」「漢文ノート」など、興味をさそう多様な特設欄を掲載。
●教科書頻出の有名古典を、辞書を引きながら読める「古文五〇選」や「小倉百人一首」など、巻末付録も充実しています。
●古典世界のイメージがひろがる、巻頭カラーページ付き。
”
2019年11月6日引用
旺文社サイトの紹介ページ
https://www.obunsha.co.jp/product/detail/077717
また、辞典の
・帯の表
“
古文がすらすらわかる
古語で辞典で初!
■一目でわかる
2段組・全用例対訳式
■漢文の基本が学べる
「漢文ノート」
■教科書の有名古典がすぐ読める
付録「古文五〇選」
新刊
”
・帯の背
“
古文がすらすらわかる
新刊
”
・帯の裏
“
紙面はゆったり2段組。見やすいからわかりやすい。
12,000語を精選。すべての用例に、対訳式の現代語訳つき。
「意味」「ガイド」「語の派生」「絵解き」「識別」など、学習要素を満載。
漢文の基本を学べる「漢文ノート」。重要句法を紹介。
一首一首をていねいに解説。付録「小倉百人一首」
教科書で読む古文に、現代語訳・品詞分解がついた、付録「古文五〇選」
巻頭には、絵で見る「古典文学の流れ」ほかカラー口絵16ページ
”
『旺文社全訳学習古語辞典』旺文社、の
この辞典の概観として、大きな特徴を次に記す。
## 紙面が2段組み
この辞典のページを開くと、出版社の紹介のとおり紙面が、2段組みだ。古語辞典に限らず国語辞典もそうだが、辞典の多くは3段組で作られている。それが、あえて2段組みだ。
ためしに手元の3段組の古語辞典と見比べてみると、たしかに違う。
ここで、2段組のよさを箇条書きにする。
一、訳文が用例の隣に位置しやすい。
箇条書きといっても一つしかない。
2段組による用例と訳文は、初学者を想定して作られている。
この2段組は、その名のとおり3段組より一段少ないので、改行までの字数が多い。これにより、訳文が、可能な限り、用例の隣に位置するように書かれている。だから、右目で用例を読みつつ、左目で訳文を読むといったことができるのだ。まさに、用例と訳文の同時読みができるという仕掛けである。
## 用例中の見出し語
用例の話を書いたので、関連して用例の見出し語についても記す。
この辞典は、用例中の見出し語が「――」で省略されていない。つまり、紙面に書いてあるまま、用例が読み通せる。たとい用言の活用形がわからなくとも、つまづかずに用例が読み通せるのだ。
さらに、用例中の用言の見出し語には、活用形まで記されている。例えば、「あはれ」の形容動詞の用例を見ると、
“
例:野分のまたの日こそ、いみじうあはれに(用)をかしけれ
訳:台風の翌日(の景色)は、たいそうしみじみとした情趣があり風情があるものだ。
”
『旺文社全訳学習古語辞典』旺文社、39ページ、整形引用者。
と書かれている。
引用では、活用形の印を、(用)としたが、実際は丸印「◯」の中に「用」と記されている。
初学者にやさしい。
## 見出し語を精選
収録語数を、あえて12,000に抑えてある。初学者に必要な語を精選してある。
だから、初学者は、目的の見出し語にすぐ、たどり着ける。また、載っていない見出し語は、初学の範囲を超えた語か、あるいは、現代語とほぼ同じ使い方の語と、自分の中で言葉の整理がつく。
なんにせよ、学びはじめの段階であれこれ欲張っても、結局、なにも身につかないから、初学者用の辞典としては、精選された12,000語で十分だと思う。
## 漢文ノート
古文には、和漢混交文というのがある。これは、和文体と漢文訓読文体が混在する文語文体である。
古文を読む際、漢文のちょっとした句法も、わからないときは調べねばならない。けれども、古語辞典と漢和辞典の二冊を机の上に置いて、ページを開いて、そして、もう片方の辞典のページをまた開いて……、えてして場所を取る。おまけに、あっちのページを開き、こっちのページを開きと、あたかも事務作業のようになりやすい。初学者は、もうついていけない。
そのことを考えてか、この『旺文社全訳学習古語辞典』には、古文の読解に必要な漢文句法の説明が、「漢文ノート」として特別に用意されている。
## 古文五〇選
古文は、何かの呪文のようだ。
かつて、大野城みずきは、そう感じた。現代語訳つきでも、原文を読むのは難しい。
原文には、親切に句読点も打ってあるし、カギカッコも入っているのに……。そういう原文であっても、学びはじめのときは、読めないものだ。
この「古文五〇選」の原文は、すべて品詞分解されている。つまり、品詞単位で分かち書きされているのだ。また、文法に関する傍注も施されている。だから、読んでいれば、語の切れ目を見分ける勘が、自然と身についていくし、省略されている格助詞もわかるようになってくるしと、初学者は大助かり。もちろん、現代語訳つき。
しかも、「辞書でチェック!」という欄が設けてあって、いくつもの学習のヒントが用意されている。
また、「古文五〇選」には、最初に「辞書を用いての古文の読み方」という講義のようなものがある。ここには、古文をどう学んでいってよいかの、一つの指針が示されている。
このように、「古文五〇選」は、ただ漠然と読んでいくというわけでなく、きちんと自学自習できるように作られている。
## 『旺文社全訳学習古語辞典』の概観を終えて
出版社の紹介のとおり、中高生・大人を問わず、「古文の学びはじめに最適」の古語辞典といえそうだ。
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