第25話 新聞紙の洋服の話

 通っていた幼稚園で、年少の頃には特にちょくちょく母親参加型のイベントが催されていた記憶がある。

 今思えば、ママ友問題や自分の予定の都合など含めて母が実際どう思っていたのだろうとも思うのだが、子供としてはそれなりに良い思い出として残っている。

 その中のひとつが、新聞紙で洋服を作るというもの。

 子供に遊ばせるのではなくて、ステージに数名の園児を並べ、その子の服を母親が新聞紙で即席で作るというものだった。

 時間と出来栄えの多数決で勝利者を決める、というようなものだったと思う。

 子供は手伝ってはいけないマネキン状態であった。 


 母は手先の器用な人で、小さい頃は母手作りの洋服を着ていた。

 髪留めからポーチまで全身トータルコーディネートである。

 母の作ってくれる服を、私はとても気に入っていた。

 だから、デザインセンスや娘のサイズ感がしっかり頭に入っていたのかもしれない。


 周りのお母さん方が取り敢えず新聞を広げて子供に巻きつける中、母は細く新聞を切り取って肩ベルトを作り、蛇腹折りにしてプリーツを表現。

 ロングのジャンパースカートを作り上げた。

 余った新聞紙をこれまた細く切って蛇腹に折り上げ、リボンまで作ってつけてくれた。

 とても可愛くて、セロテープを外して脱ぐのが残念だったほどだ。

 確か、勝負結果もダントツで母が1位に評価されたと思う。


 未だに時々、あのデザインのスカートが欲しくなる。

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