肉筆のお手紙

 たっくんへ。


 いっぱい伝えたいことがあるんだけど、直接喋って伝えるのは難しそうだから、こうして肉筆のお手紙にしました。

 初めてだから上手く書けないと思うけど、喜んでくれると嬉しいな。


 君と出会ってもう三年が経つね。

 高校生の時、いじめられてたわたしを庇ってくれて。

 すごく嬉しかった。

 辛いことしかない真っ暗闇な毎日にパーって光が差したようだったんだよ。


 君の言葉はいつだってわたしを変えてくれた。

 昔のわたしはとにかく自信がなくて、前髪を伸ばして顔を隠してないと外も出歩けなかったけど、君は言ってくれたよね。

 可愛い顔をしてるんだから切ればいいのに、って。

 あの言葉がなかったら、わたしはきっと今も前髪で顔を隠してたと思う。

 それに、わたしが黒魔術だとか哲学だとか変な本ばかり読んでいても、気にしなかった。

 何かに詳しいって素敵なことだ、って。


 そんな君のことを好きになるのは当たり前で。

 朝起きてから夜寝るまで、わたしは君のことしか考えられなくなっちゃったんだよ。

 わたしが勇気を出して告白した時、君ははにかんで頷いてくれたね。

 あんなにも嬉しい瞬間は一度もなかったし、そこからの日々は幸せで溢れてたんだ。

 それがいつまでも続くって思ってた。


 だから、かな。

 別れようって言われたときは頭が真っ白になっちゃった。

 ごめんね。つい刺しちゃって。すごく反省してる。

 ほんとは直接謝りたかったんだけど。

 でも、君は動かなくなっちゃったから、言葉で伝えられなくて。


 どうすれば謝れるかなって思って。

 もし身体と魂に繋がりがあるなら、君の身体で書いた文字は伝わるんじゃないかって。

 だから、こうして君の髪と骨と血を使った肉筆のお手紙を書くことにしました。

 届いてるかな。

 きっと届いてるよね。

 そう信じます。


 それじゃあ最後にこれだけ。

 わたしはこれからもずっと君を愛し続けます。


 桜子より。

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