宇宙からの侵略者

 太陽系外の惑星から地球へと襲来した者達がいた。

 巨大な宇宙船だ。ワープ航法を用いたので、地球まではあっという間だった。

 その外観は光学迷彩が施されており、また熱源反応や電波も外部には発していない為、地球の者達にも気づかれてはいない。

 彼らは知的生命体を資源とすることで自惑星の発展に活用している。

 新たな資源を求めて地球へと攻めて来たのだった。


「さて、まずは彼らの現在の技術力を知っておきたい。この星で発展している国々へと斥候に行くのだ」


 彼らを率いる隊長はそう命じた。部下達はすぐさまその命に従い、個別に地球へと降下していく。その為には専用の小型宇宙艇を用いた。宇宙船と同じく高度な技術で保護されている。バレる心配はない。

 事前に宇宙からこの星の知的生命体の姿は確認したが、その見た目にほとんど違いはなかった。ゆえに紛れ込んで情報収集することは容易いだろう。

 隊長は宇宙船にて部下達の報告を待つことにした。


 やがて、徐々に部下達が帰還し始めた。

 しかし、彼らは一様に怯えている様子だった。

 一体、この惑星に下りて何を見たというのだろうか。


「どうだった、この星の技術力は」


 隊長が問いかけると、これまで口を閉じていた部下達が一斉に語り始めた。


「こ、この星は危険です! 我々の襲来を事前に察知している模様です! 未だ訪れていない時代に襲来する敵について詳細に書き記されたものを私は見ました!」

「その通りです! 私も見てしまいました……ブラックホールを兵器として操り、敵を屠る光景を! あのような恐ろしい兵器は我が国でも開発されてはおりません!」

「そればかりか、彼らは既に遥か彼方の銀河までも進出しているようです、我々の比ではありません!」


 そのような報告を無数に受け、隊長は意気消沈する。


「何ということだ……」


 彼の部下達が地球で見たのは、小説に漫画にアニメといった類の創作物だった。

 それは地球に住む知的生命体、すなわち人間がその想像力を駆使して生み出したものに過ぎない。

 しかし、彼らはそれを現実のものとして受け止めてしまっている。

 それはなぜか。


 彼らの星には娯楽という概念が存在しなかった。創作物、というものを知らないのだ。

 それゆえ、SFと呼ばれるジャンルの、特に宇宙からの敵に関する作品の全てを、未来を記した預言書はたまた過去に起きた出来事の如く受け止めてしまった、というわけだ。


「恐ろしい……この星に手を出すのはやめておこう」


 そうして、彼らは立ち去り、地球は無事に難を逃れたのであった。

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