第110話12月16日生きていてくれればそれだけでいいのだろうか

ジャージ、トレーナー、セーター、DVD各種を持って病院へ

家屋内画像もなんとか間に合った

年末のシフトも出たので

外泊計画を考える

本人も言ってるのだけど

へたな外泊で里心がつくと入院生活がつらくなる

つらいだけならともかく

精神的に病んだらと思う

じっくり話し合えればいいのだけど

なかなかね、それこそメンタルがね


日曜日の夕方

お店で教え子一家にあう

家族四人でとても幸せそう

ほっとしたのはそれをみても

疎ましいとも妬ましいとも思わなかったことで

まだそこまではいっていないと

少し

救われた


リハビリを見学

四点杖介助付きながら

自立自歩

倒れてからひと月と16日での進化


どこまでいけるか

現場復帰は叶うのか

期待すると裏切られるのが俺ではあるけれど


期待するよなあ


等と前向きなことを言ってみたりもするものの

その実は虚勢に過ぎず

できないことはできないがのしかかってくる

すごい、ここまで回復するのはなかなかないよ

と言ってくれる人もいる

お医者もいる

でもそれはさ

80歳で脳梗塞で倒れた人が

介護されつつ実生活で暮らせるレベルに回復する

を着地点にした時の話だよね


たった一人、これまで一緒に暮らしてきた

これから一緒に暮らす家族からするとさ

その着地点で暮らす母の姿はとてもつらいし

実際、介護しながら見守りしながら生活はできないから

俺がいない時間はヘルパーを入れるしかなくなる

となったら、その費用はどこから出す

何度もいう

10円20円を節約して切りつめて切りつめて

少し回し方を間違えたら電気やガスがすぐ止まる経済で

はっきりいえば、そこに回る金がない

観戦も外でも団体活動も全部やめてそれを充てるのが普通なのだろう

それだけを楽しみにリハビリをがんばっている母がいるんだ

そういうのを人生の楽しみにしていたんだよ

季節のイベントとか孫やなんやのイベントよりも


事務作業、整備作業、精神的支柱、金


ただそこに生きているってだけになりそう

生きていてくれればそれでいいという人もいるらしい

生きていてくれて、毎日ぽろぽろ泣いて

そのうち泣くことも忘れて、よだれを流して

その辺に転がっているだけ

それでも生きていてくれればそれだけでいいのだろうか

俺は嫌だわ


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