第78話11月 26日 リベンジできたら 泣きながら笑ってやる

朝 5時前目が覚める

水を飲んでトイレに入って再び寝ようとする

寝付けず なんとなくパソコンをいじる

そうしているうちに 右手に違和感

なんだか力が入らない気がする

ぎゅうぎゅうと握りしめてみても ボールを握ってみても

しばらく柔軟体操する

怖くなって歩いても見る

膝上げもする

なんとなく右側が空虚に感じる

ろれつを確かめようといろんな言葉を喋ってみる

殊更喋りづらいということはない

けれども怖いので録音をしてみる

自分で聞いてみてもおかしいなところはない

どうやら疲れで右手が 重くなっていた らしい

そう判断したものの 本当にそれなのかどうか 一人だと決断が下しにくい

こうして音声入力をしている最中に ふと突っかかったりしてしまうと

よもや俺も脳梗塞を発症してるのかなと 不安になる

実際 そうであったとして どうしようかと

救急車を呼ぶ

それしかないのだけれども

母はどうしよう

生活はどうしよう

仕事は連絡できるとかなと

そしてそういう不安が大きなストレスになって 一過性かもしれない 何かを脳梗塞に発展させてしまうかもしれない

とても 怖い

昨日は母の転院で 早朝3時4時から起き そのまま夜の 9時まで ほぼ立ちっぱなし

食事も取らず 母の 壊れてしまいそうなメンタルをずっと抱きしめながら 過ごした

体力も精神的なものもすり減らしきって帰宅した

母と一緒に買ったレトルトのトマトカレーを温め 卵を一つ放り込み お気に入りだったインターネット番組をつけて 貪り食う

パンにチョコレートペーストを塗ってそれも口にねじ込む

トマトカレーが 美味しければ美味しいほど 胸が詰まる

もう今更本当ならなんてことを何で言っても仕方ないし言うべきではないんだけれど

本当なら 何かのイベント前

母とふたりで半分ずつ分け合って食べる予定だった

トマトカレーなんて食べたことがないから どんなもんだろうねと キャッキャしながら買ったものだった

今度どこか遊びに行く時

朝さっと食べられるようにと

または 帰ってきた時に さくっと作って部屋にこもれるようにと

そんな話をしながら買ったもの

こうして母と一緒に何かをした記憶を少しずつ食べていく

それはとても辛い苦しい作業で だけど置きっぱなしにしておくわけにもいかないので 食べていく

それよりも辛いのは そういった母と一緒に買ったもの 母と一緒に計画したこと約束 それらが一つ一つなくなっていき 何もなくなってしまうことだろう

新しく買えばいい

新しく計画すればいい

新しく約束すればいい

そういうことじゃないんだ

その新しくにはそれまでしてきたことに 目を伏せて 新しく始めるという意味があるじゃん

目を伏せなければ 進めないんだよ

直視すると

何でこんな言葉しかないんだろうかと思うけれど

辛い

辛いなんて そんな言葉で表せないんだけど 言うなれば辛い

お前は弱いなぁと 罵られるだろう

だけどね家にあるもの ほとんどがさ今や母と二人で 一緒に探しにいって買ってきたものなんだ

なぜそういう状況になったかというのがめんどくさい背景があるのだけど

二人で一緒にというのが 以上であることも理解できるのだけど

そうしなければどちらかがもしかしたら二人ともブッ潰れていた そういう環境にいた

それを言い訳に何かをするわけではない

何か 甘えさせて欲しいわけじゃない

その環境に言い訳をしないために じゃあどうすれば乗り越えられるかと 考えた結果

母と二人で戦っていこうと そうなったんだ

他に家族を迎え入れるにはあまりにも 壊れすぎていた

それは当時の家庭もそうであるし 俺自身の 人を受け入れるメンタルもだ

その 環境を真の意味で共有できる 人というのは本当にいなくて

母だって多分 どこまで俺と共有できていたかと言うと 母には母なりの苦しみがあるわけで そこを本当に俺が分かっていたかと言うとわかっていなかっただろうし

その逆も当然あるだろうし

だから その中でも共有できる 母と二人で となっていった

トマトカレー いつか 母と一緒にリベンジできたら 泣きながら笑ってやる

俺はそういうことを言えば言うほど叶わない人間なんだけどね

何一つ俺がこうしてやるこうなりたい こうなってほしい と思ったことは かなわない

俺のさ 努力の範疇じゃないところ

運だとか もうそうなるしかないとか

そういった部分で 良い方向に転がったことが本当に1度もない

自分の力で どうにもできない 願いを どうか 叶えて欲しいです

母の 半分を返してください

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