第75話11月25日 この駅の裏手の広場で 教え子のダンスを見ていた

転院した

手話の教え子の家族に世話になって無事転院

非常に遠いところで 一旦家まで 衣類を取りに帰ったのだけど

その車も出してもらった

非常にありがたい

その後 リハビリの様子を見ながら 待機

明日から本格的に始まるリハビリ

頑張れと思う

夕方になって 帰り支度を始めると 泣いて引き止められる

予想をしていたことなので その辺りは飲みこむ

ただ 昼食を取り損ねている

早朝5時前後ぐらいが朝食だったので

常に空腹

目が回ってくるが食欲がわかない

結果 19時半まで一緒にいた

その後タクシーで駅まで

そこから地元の駅まで電車

これが後どれぐらい続くのか

現実的な話体力や精神力はまぁ

なんとかする

経済力だ

これまで10円 20円をどうにか安く上げようと必死になっていた 生活で

そこから千円2千円一万円二万円 ポンポンと飛び出していく日々 へ

それがどこまで続くのかというのもあるし

正直お金があればね 母の介護だけでのんびりと

なんてこともあるんだけれど


バスでなくてタクシーで帰る

本当だったら無料のところが 1200円

これはきついよ

そして家に帰って何もできずに倒れる

翌日は休むこともできず肉体労働

どこまで持つんだろうね

今日は母の教え子とその家族に本当に救われた

朝から晩までお世話になった

それを思うと 俺の人間関係の希薄さに呆れてしまう

結局さ そこが俺のダメなところ

悪い言い方をすると

めんどくさいことお金がかかること 我慢すること打算的であること

それらを踏まえて 人間関係を頑張る ていうのは保険なんだよ

こういう時のための

とか言うと非常に人間としてどうなんだろうかと言う 気もするけれど

実際 そうだよね

別にそういうので誰かと付き合っとかそういうことじゃないにしても

結果的にそれがこういう時の手助け してくれる

力を呼ぶ

とても純粋な 気持ちいい保険なはずなんだ 本来は

それをね 何を尖っていたのか 人付き合いに異常な純粋さを求めて

何もかも 拒絶するかのように暮らして

結局母と二人の生活に埋没して

大きな事態が起こってしまった時に何もできず

無力でぽつねんとしてしまう

母が泣いていても何もしてやれない

本当に俺の人生がやってきたことの 薄っぺらいことよ

泣いても泣ききれない

なんてことを思いながら 電車を待つ

まるで夏みたい

夏の初めか夏の終わりか

少し涼しくて虫が鳴いてる

ほんの少し前は母と二人で

この駅の裏手の広場で 教え子のダンスを見ていた

あれも夏の終わり

暑かった

でも楽しかった

本当に楽しみにしていた夏祭りだった

来年は見に来れるんだろうか

楽しい楽しい色んな恒例行事が 全部剥ぎ取られた

後悔ばかりをしてしまう

先を見据えなきゃって思うけれどね

例えばオレに母以外の家族がいれば

どこかで慰めあって前を向けるのかもしれない

だけど家族のすべてを母に集約してきた収束してきた俺は

母との行動が失われた瞬間に 何にもなくなってしまう

分かっていたことだし覚悟していたことなんだけれど

実際に そうなると

あまりにも唐突にそうなると

あまりにも 空想的で非現実的で

まだ 何が起こったか 理解していない

理解したくない俺がいるよな

無様だよな

弱虫だよな

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