第32話久しぶりに 味があるご飯だった

病室を後にした

今日は昨日の疲れなのか 今日1日 診察やリハビリがなかったせいなのか 非常に気持ちが落ち込んでおり 昨日それなりに 動いていた 手足 特に足が上がらない

マッサージをしてから 手のひら 握力運動 手をひっくり返すリハビリ指を折って数えるリハビリ 手のひらを大きく開いたり閉じたりするリハビリ などを行う

その後 舌を動かす 運動

ゆっくりと足を動かしてみる

やはり動かないので まずは俺が足を伸ばしたり 畳んだり それに合わせて足が動くイメージをする

何度も何度も繰り返してイメージが固まったころ再度動かしてみると、ぐっと動いた

その後しばらくお話

手話団体の今日の練習を聞くので色々と報告

嬉しそうに聞いてくれる

買い出しで、外へ

途端に無念があふれでた

してはいけないと思いながら、もしあの時こうしてたらと後悔と妄想が顔面を焼く

兆候はあった

ろれつがおかしい気がすると言っていた

すぐ病院と言ったのだけど、疲れてるだけ、メニエールかもしれないと主張

実際その時はすぐに復調した

もし連れて行っていれば

一過性の脳梗塞ですみ、薬が処方されここまでにはならなかったかもしれない

思い始めると耳がぎゃりぎゃりと痛む

視野がなくなる

頭が膨張して水の音がする

ずっと一緒にいたのに

何日たってもこうだ

たぶん狂ってしまうか死ぬまでこうだ


夕飯は一緒に食べた

久しぶりに 味があるご飯だった

ファミレスでよくこうして 手話の子供たちの話をしながら 飯を食った

それを思い出して しまうと途端に味がなくなる

食事の後入れ歯を洗ってあげる 安定剤がべっとりついていて指でこそぎ落とした

ああ これからはこういう 世話をしながら 生きていくんだろうなと

それ自体は もういいんだけど 飲み込んでるんだけど こんなことができなくなった母というのが 悲しい

そしてもし俺が どうしてもしてあげられない時 どうするんだろうかと思ってしまう

体や口の中が 気持ちが悪いままずっと俺を待つんだろうか

思うと 気がおかしくなりそうだ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る