第22話性欲

性欲

どういったものなのだろうか

母が倒れ入院したその翌日の朝 そしてさらにその翌日翌日 3日程度は衰えることもなく むしろ縋りつくようにして 1日2回 自慰を行う

これまでどおりの日々にすがりつくようにしていたのは間違いない

アダルト系の動画を 探したりもするのだけれど それも新しいものではなく 以前よく見ていたものを求めて いた

一週間 たった昨日から 性欲がなくなる

この現実と ようやく 向き合ったということなのだろうか

なんだか また一つ まともな部分が 失われた気がする

日常を日常として 生活をしていきたかった と言うとかっこつけすぎたのかもしれない

これまでの楽しい日々を 忘れたくなくて それにすがりついてしがみついて たくて それまでしていたことをやめるということが 怖くて 無理やり 本当に無理矢理 性器を立たせて 自慰にふけった

年齢も決して若くないので あと何度 性的な 行為ができるのだろうかと 思うこともある

そんな中でのこの事態で もしかしたらもう二度と性器が反応しない日が 来るのだろうかと

もしかしたら 2日前の自慰が最後の 勃起だったのかもしれない

こうやって少しずつ 俺が俺でなくなるのかもしれない

変わっていくと言えば聞こえがいいけれどやはり これはただ失っていっている ことに違いない

性欲が強い方なので それが こんなにもなくなるとは思いもよらない

年齢に比べて自慰 の頻度も非常に高く 一日一回が日課 気持ちが 高ぶれば 二回、三回の 日もある

それが 当たり前のように何年も何年も若い頃から続いていたのが ここまでぴったり何もなくなるのは 初めての経験で ばかばかしい と思う方もいるかもしれないが 恐怖を感じている

さっき言った 二度と勃起できないんじゃないかと言う 怖さではなくて 自分が 当たり前のようにしていたこと当たり前のように執着していたことがどうでもよくなっている どうでも良くなっているというよりも 欠落している

その事態 が 怖い

誰かに抱きしめてもらったら 何かが変わるのかなと思う

誰かを好きになったら どうなんだろうかと思う

けれども そういったことをしている余裕もなく 人を好きになった時におそらく感じる大きな罪悪感がまた俺を押し潰すんだろうと思う

本当の事言うと最近少し好きな人がいて その子と話すのがとても楽しくて もしかしたら 恋愛なんてものが 久しぶりにできるのかなあなんて 思っていた矢先でもあった

実際のところ自分の環境を考えると デートに誘えるわけでもなく 誘ったところで満足させられることもなく だから楽しくお喋りできれば満足な部分もあり その辺もだらしのない男だったということだ

それでも もしどこかに遊びに行けるならなんてことを考えなくもなくて そういうことを 思える時間というのは 本当に大事なんだなと 痛感する

なんだろうここ 1年ぐらい 青春を やり直そうと すごく頑張っていた気がする

洗顔剤や 整髪料を気にしてみたり 眉を整えてみたり 服の流行もいろいろと探ってみたり

その辺りも なんだかんだ母との買い出しで買っていたので今となっては どうでもよくなってきてしまう それがまた怖い 身だしなみ がどうでもよくなるなんて 一番危険な兆候じゃないか

かといって したくもないおしゃれを するのはどれだけのストレスだろうかと思う

せめて性欲が帰って来れば おしゃれをするということも自分の中で正当化ができる納得がいく

自分が正常な人間であることを 確信するためにも 再びしっかりと勃起できる日がくるよう祈っている

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