第13話うっかり笑ってしまうとそれもまた大きな罪悪感になる

食欲が出ないです

まるでなくて どうにもならないんだけれども体力が落ちても困るので 無理矢理にでも食べる

ヨーグルトも食べる

とにかく人の声が恋しいので よく喋る

部屋にいるときは 大体インターネット番組を 流している その番組には救われるものの 楽しいおしゃべり空間すぎて 時々 気分がきつい時もある

少しでも違うことを考えて 気を紛らわせないとおかしなことになりそうなので 妄想じみたことを考えてはみるんだけれども 結局この事態につながってしまい ただただ鬱になる

極力 母のことを考えないようにすることが逆に罪悪感を 突きつけてくるし 頑張ってインターネット番組を見たりなんだりして うっかり笑ってしまうとそれもまた大きな罪悪感になる

いつかはなれて行かなきゃいけないのだろうけれど 本当に 辛い

何が辛いってやっぱり ただ頑張った人がここまでされなきゃいけないのかという事態が 辛い

もちろん俺自身がそうなりたいわけではないけれども 一番頑張ってもない 周囲の人に迷惑をかけている収入も少ない好きなことしかしない 言いたい放題を言う 偉そうなことばかりを言う お金がないのに遊びに行きたがる

そんな俺の方がどうにかなるべきなのかもしれないと思ってしまう

もし誰かが何か罰を与えようと思って この事態を引き起こしたんだとしたら あまりにも的確すぎる

俺だけ残されても 生きてることなんて意味がないし 東京も博多も広島も 徳島も 大阪も どこに行っても 母と元気に歩き回った思い出ばかりで

まるで新しい場所に行けば母と一緒に歩き回りたいと めそめそしてしまう

いい大人が母と一緒母と一緒とわめくのは気持ちが悪いのもよく分かっている

けれどもうちは 親父が倒れてから ずっと母が頑張り 可能な限り俺が 支えてきた

弟が家出した時もそう

思えば 彼が家を出て行方不明になった時二人で探して回ったのが この母と一緒の 発端だった気がする

弟を探して 町を車で走る母がいてその車に同乗した時にあまりにも不安定な運転だったのが怖くて一緒に探すことを申し出た

それまではときどき一緒に行動することはあっても日々を共に過ごすことはなかった

それから車の中でご飯が食べられるようにお盆を用意して 安くなったお弁当いや割り引かれたお寿司などを食べながら 父の買い物をしたり弟の予定を探したり 年末には多少でも日々を楽しもうと二人でレンタルビデオ屋でビデオを 借り込んだこともある

なんとか 現実を忘れようと 漫画に没頭させた時期もある

それでも母はどこかしら家のことが頭から離れなかった それを救ってくれたのはくだんのスポーツ観戦だった

観戦に行ってる時はただただ何もかも忘れて楽しめたそれから17年 2002年からだからそれぐらいだ ほぼ毎月 最近経済的な事情であまり行けなくなったけれどもそれでも年間5回から6回 それが17年間だ

もうね 高校2年生です 観戦行き始めた時に 生まれた子がいたとしたら

手話団体で面倒を見ている 高校1年生の子達よりも 長いんだ

手話で言うと 今の体制になって約14年 その前を入れると20年以上 一緒に作ってきた団体だ

活動休止せざるを得ないのか どこか落とし所を見つけて継続するのか 判断せざるを得ないということが もう苦しい

なぜなら この事態によっての観戦休止であったり活動休止であったりするから

これがね経済的事情であったり自分たちの意思で 体力的な問題で 休止するよということであれば 切ないけれども 気持ちの整理はつけられる

体の半分以上 持って行かれ 精神の半分以上持っていかれ 人生の20年を持っていかれている

誰か助けてくれと言いたいけれど誰かと交流するのがただただ しんどくて重たくて

母に甘えてきてしまった俺としては その誰かもいない

こういう時はいつも 母と相談して 母に愚痴を言ってギャーギャー言いながら何とか乗り越えてきたから その母がいない状況だと 俺は 何にもできない

ただただボロボロになっていく

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