十五 淑梅(二)
少女は男たちの目が一斉に自分に向けられたことにもまったく動じず、澄ました顔で部屋の中に入ってきた。
二重のくりっとした目に小さな口。前髪は眉の上で切りそろえ、両耳の上にまとめた髪に紅い牡丹をかたどった
「姉の
「
淑梅は細い眉を逆立てた。
「姉さん、どうして? 今日着飾っているのはこのひとたちに気に入ってもらうためでしょ?」
「やめてって言ってるでしょ!」
「二人ともやめないか!」
淑梅はちらちらとわたしたちの顔を見ながらお菓子の皿を置いていった。
男たちはなぜかみな黙り込んで彼女の所作を見守った。
淑梅が一礼して部屋を出ていくと、朝元以外の男たちは同時に深いため息をついた。
朝元だけはうきうきとして
「どうですか? 姉を気に入りましたか?」
仲麻呂はいつもながらの上品な笑みを浮かべて、
「とてもお美しい方ですね。わたくしなどはもうなんだか恥ずかしくなって、下を向いてしまいました」
次いで朝元は仲麻呂の隣にいた
真成はいつもの優しい笑顔とは似て非なるどこかぎこちない笑みで、
「わたしも
最後に朝元は
特に表情の変わらない真備が口を開こうとすると朝元はすかさず、
「真備さんはだいぶ年上の方だから、さすがに恥ずかしいとは思わなかったですよね? 姉について、大人の男の意見を聞かせてください」
真備は顎に手をやり少し考えてから、
「……とても元気で、生気がみなぎっていて……まるで跳ね回る鹿のようですね」
「あはははは!」
吉麻呂が笑い出した。真成、そして仲麻呂までもが顔を伏せて肩を震わせていたが、二人はちらと目と目を合わせると、結局こらえきれずに笑ってしまったのだった。
こんなにみんなに笑われて、さすがの真備も怒るのではないかとわたしは心配したが、当の本人はお茶を静かにすすっているだけだった。
だが彼が一度横目で真成と仲麻呂を見やり、ほんの一瞬微笑んだのを、わたしは見逃さなかった。
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