もしや····これは

コロシアムに0のカウントが鳴り響く。俺と、カインは同時に前に進み出す。


(俺、対人戦やったことなんだよな····)


俺はとりあえず、カインとの距離を縮めることにした。

そして、一気に距離を縮めた瞬間、カインは剣を振った。その瞬間、目の前の景色が揺れる。そう、カインは斬撃を飛ばしてきたのだ。


「何!?」


俺はとっさに避ける。だがその時、俺は気付いた。


(カインの姿が見えない!いったい何処に····)


俺は斬撃に意識を向けすぎた。俺はカインから目を離してしまったのだ。


(何処だ?どこから来る?)


俺の後ろで微かに足音がした。ゆっくりと近付いてくる。俺は目を瞑り、感覚を研ぎ澄ます。

足音はそのまま、ゆっくりと俺に近付いてくる。カインはおそらく、俺が気付いていないと思っているんだろう。


「ここだぁ!」


俺は足音が自分の攻撃可能範囲に入った瞬間に後ろに振り向き、ファーストとセカンドを振るう。しかし、その攻撃は誰にも当たることはなかった。


(どういうことだ?)


そして、俺はようやく気付いた。


(あの音は、足音なんかじゃない!斬撃だ!カインはどこかから斬撃を飛ばしているんだ!)


その瞬間、俺を囲むように音が鳴る。


(全方位から斬撃を!?こんなことが出来るのは····)


俺は上を向いた。そこにはカインがいた。


「おいおい!宙に浮くなんて卑怯じゃないか?」


俺はそう、呟く。するとカインが返事をした。


「卑怯?そんな言葉が戦場で通じるとでも?」

「くっ!」


確かにそうだ。戦場は常に命懸け、どんな手を使っても反則なんてことはないんだ。俺は少し考えが甘かった。


「さぁ?ここまで来れるかな?」

「別に行かなくても、お前は倒せるぜ!『聖剣解放』」


俺は聖剣に魔力を集める。すると、カインが落ちてくる。


「何!?」


驚いたカインは再び宙に浮かぼうとするが、カインが宙に浮かぶことはなかった。そして、俺は魔力によって巨大化した聖剣を振り下ろす。


「はぁぁぁぁぁぁ!!」


俺はカインに当たる直前で聖剣を止める。


「あっぶね~、人殺しになるところだったぜ····」


そして俺は一息吐くと、カインのもとに歩く。


「ありがとうございました」


俺はカインに手を差し伸べる。するとカインは俺の手を掴み、立ち上がる。


「こちらこそ!最後のあれにはビックリしたよ!まさか、僕の魔法を無効化するとはね····」

「俺も、あの飛ぶ斬撃にはビックリさせられたよ····」


俺たちは互いに互いを認め合い、笑い合った。そして、アナウンスが流れる。


「暁翔!!2年ぶりの新人剣士の誕····」

「違う!」


カインがアナウンスに割り込む。


「翔は、魔力を操作できる!これがどう言うことか分かるか?」

「まさか!!魔法剣士だ!!暁翔は魔法剣士の素質があった!!」


みんなが俺の事を誉めている。俺は魔法剣士というのがすごいのか分からなかったからこの時はあまり実感が湧かなかった。

試験を終えた俺は受付にすぐさま行った。


「冒険者プレートを受け取りに来ました!」

「はい!既に準備してありますよ!」


受付の女性に冒険者プレートを貰い、説明を受けた。どうやらこの世界でお金を払うには冒険者プレートに入っているポイントが必要らしい。ポイントは銅貨1枚で1pt、銀貨1枚で1,000pt、金貨1枚で1,000,000ptに変換されるらしい。


「ありがとうございました!」

「それでは良い冒険者ライフを!」


そして俺はギルドから出ようとしたとき、ふと思い出した。


「やべ!素材を買い取ってもらわないと金ないじゃん!」


俺は受付の女性のところに猛ダッシュした。


「すいません!素材の買い取りをお願いします!」

「分かりましたけど····何も持ってないじゃない?」

「今、出します!」


俺はアイテムボックスから、銀龍の一部と黒龍の一部を取り出す。一部と言っても決して小さくはないので、ギルドの床に置く。

一部しか出さなかったのは、単に龍の素材は後々役に立ちそうだったからだ。


「これは····?」

「銀龍と黒龍の素材です!」

「ちょ、ちょっと待ってください!」


受付の女性は慌てて、ギルドの奥の部屋に入ってしまった。するとすぐさま一人の男を連れて、戻ってきた。

そして、その男は魔法を使用した。


「『鑑定』」


おそらく、その素材が本物か見極めているのだろう。まぁ、結果は目に見えているがな!


「本物だ····本物の龍の素材だ!」

「だろうね····」


そして、鑑定を終えた男が俺の方を見る。そして、質問してきた。


「どうやってこれを?」

「····え?自分で倒しましたけど?」

「それを証明出来るものは?」


確かに、証明するものはない。しかしここで証明できないと買い取ってもらえない可能性がある。どうしたものか····

俺はとりあえず、龍の素材、丸々2匹を全て取り出す。


「これで、証明になるか?」

「まさか····あなたはいったい?」

「俺が何者かなんて、どうだって良いでしょう?」


そう、わざわざここで正体を晒すこともない。


「買い取って貰えますか?」

「あ、ああ····」


結局、龍の素材の一部は100,000pt位で売れた。俺はそれを確認してギルドの外に出た。するとそこにはアリスたちがいた。


「遅かったですわね?」

「すまない····」

「まぁ、良いですわ····さぁ、宿に行きましょう?」


俺は、みんなが止まっているという宿で休むことにした。この世界の事をもっと知りたいから、みんなに教えてもらう予定だ。

宿に向かう途中、俺はみんなにこんな話をした。


「みんなはすごいな····あんな強い人が試験の相手で、大変じゃなかったの?」

「ええ、全く大変じゃあありませんでしたけど?」

「みんな、メチャメチャ強いんだな····」


俺は、落ち込んでしまった。というか、あの人に勝てるんだったら、銀龍くらい倒せそうだけど····


「翔さん····は、勘違い····してます」

「何を?」

「あの試験····本来は4人の····チームで挑むもの····」

「え?」


もしや、これは····あのギルドは俺を合格させる気はなかったと言うことか。なんか、おかしいと思ったんだよな~····


「それで、翔さんは騎士になるつもりはあるのですか?」

「今のところは、そうしようかなと思ってるけど····」

「けど?」

「やっぱり、強くなるためには遠回り過ぎかな?と思って····」

「ゆっくり考えれば良いのですよ!」


そんな事を話していると宿に着いてしまった。早いな····

ちなみに宿代は1泊10pt、この辺では一番高い宿らしい。ってことは、俺は結構な金持ちということになる。


俺はとりあえず自分の部屋のベッドに寝転んで、休むことにした。

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